「ジャンボ」の愛称で知られ、現在も神奈川県1部FIFTY CLUBで現役を続けるFW大久保哲哉(42)が、“三度目の正直”で「関東2部昇格」をつかみにいく。

10日から、地域リーグから関東2部昇格を目指す「関東社会人サッカー大会」が開幕する。関東圏の都道府県リーグ1部の上位クラブ、計16チームが一発勝負のトーナメントを戦い、決勝に進出した2チームが関東2部に昇格する大会だ。大久保が所属するFIFTY CLUBは神奈川県1位で昨年に続き、同大会へコマを進めた。初戦で東京2位のCERVEZAと対戦する。

大久保は19年からFIFTY CLUBに所属し、2部昇格への挑戦は今回で3回目。過去2回は、いずれも初戦で無得点で競り負けた。「去年は0-0からロスタイムに失点して終わりました。昇格という大きな目標はありますが、まず、1勝しないと次には進めない。10日の初戦にすべてをかける。その先は勝ってから考えること」と気を引き締めた。

日程も過酷だ。10日、11日は“中0日”の連戦。準決勝は17日。3連勝で昇格の扉が開く。「一発勝負なので、うちに限らずですけど、リスクを背負わないサッカーになる。より一層、先制点の重みを感じている。過去2回、先制されているので。そこを取れれば何か変わるのではないかと。自分が、プロ契約選手の意地として決めないと」と責任を口にした。

現在42歳。19年から、J1から数えれば7部相当のカテゴリーでプロ選手として現役を続ける。それでも、コンスタントに結果を出し続けているのがジャンボだ。19年は18試合18得点で得点王。20年は8試合9得点で得点王。昨年は8得点で得点ランク2位。今季も6得点で得点ランク2位と結果を残した。練習環境も人工芝やフットサル場での練習になるが、負傷することなくピッチに立ち続けている。

大久保 ぶれないでいくことを心がけている。結果はやはり、日々の練習ですね。地味なクロスの練習と、いまだに、GKに付き合ってもらって夜11時半まではクロスからのシュートを続けています。けがないのは、準備が一番。練習は午後9時からですが、午前中は定期的にジムに通って、練習も1時間前から体幹トレーニングをしたり。プレーする場所はJとは違いますけど、トレーナーもいてくれる。

現役を続ける一方で、指導者のA級ライセンスを持っており、神奈川・三浦学苑高サッカー部のテクニカルアドバイザーを務める。練習の合間に部に顔を出し、指導に当たる。現役とコーチの二刀流でもある。「自分も選手をやっているので、プレーやメンタルの目線でもアドバイスできる。ライセンスも取って指導者の視点も持ててきている」。トレーニングのメニューを決めたり、部員へのアドバイスも送る。

部員全員が先発でピッチに立てるわけではない。自身もJクラブに所属していたころは、サブやベンチ外も経験した。

大久保 腐るのは簡単です。自分が決められることではない。一喜一憂することなく継続することが大事だと言うようにしている。自分はFWなので、途中出場の場合、チームが苦しい状況の時に出ることが多い。そのときに、結果を出して勝ったりすることで価値が上がる。そういう状況の時に出せるかどうか。僕はいろんなことをした。途中出場で出て結果を出した先輩に「どんな準備をしたのか」と聞きまくっていた。トライアンドエラーの繰り返し。その経験も伝えて指導に当たっています。

10代の選手と向き合うことも刺激になる。同年代の選手たちが次々とユニホームを脱ぐ中で、現役にこだわる。その理由に「まだまだ動けますし、けがもない。やめるのは簡単。何より、サッカーが好きで、自分が得点する感情は何事にもかえられない。1年でも長く現役を続けたい」とキッパリ。

所属クラブの角野隆監督も「今回は緊張もない。クラブの新しい歴史をつくりたい」と、トーナメントでの昇格へ強い思いを口にしているという。大久保は「地域リーグもプロ契約選手がいるチームが増えいる。その中で勝っていくのは難しいですが、勝つためには、まず1勝がかぎになる。まずは先制点。昇格して、Jリーグ時代から自分のプレーを見てくれている角野監督を胴上げしたいですし、チームとしても個人としてもクラブの歴史をつくりたい」。ジャンボの目は、2部昇格に向けられていた。【岩田千代巳】