「サッカー日本代表W杯で勝つための監督論」(山本昌邦×武智幸徳、ベースボール・マガジン社1800円)
1993年(平5)10月28日の「ドーハの悲劇」は、日本サッカーにどう生かされているのだろうか? その1つの答えが「ハーフタイム」にある。試合は後半に動く。だからこそ、ハーフタイムをどう活用するかが重要になってくる。
だが30年前のロッカールームでは、ワールドカップ(W杯)出場へ高ぶる感情を抑えられず、誰もオフト監督の話を聞いていなかったという。つまりチームコントロールが利いていなかった。そんな苦い経験を生かした代表例が、昨年のW杯カタール大会だろう。ハーフタイムを活用し、初戦のドイツに逆転勝ち。続くスペイン戦でも後半に勝ち越した。ドーハの記憶を「悲劇」から「歓喜」へと変えた。
日本代表の史実を振り返ると、成功もあれば失敗もある。18年W杯ロシア大会のポーランド戦では1点リードされた状況で、後に議論を呼ぶ「ボール回し」を選択。同時刻の他会場の試合をてんびんに掛け、負けるが勝ちとばかりに16強入りを手にした。この1次リーグ3試合を270分通しで考える知見は、過去の経験から得たものだった。一方で、続くベルギー戦は前半の2点リードから後半に追いつかれ、ロスタイムに決勝点を奪われた。ワンプレーの怖さを再び思い知った。
数多(あまた)の悲劇と歓喜を糧としながら、日本サッカーは成長曲線を描いていく。時代を彩った監督たちの考え方やその史実は「財産」として未来へとつなげたい。【佐藤隆志】

