プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月9日付紙面を振り返ります。2003年の一面(東京版)はサッカーナビスコ杯の京都-大分戦でのやらせゴールでした。

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<ナビスコ杯:京都3-2大分>◇2003年3月8日◇西京極

 前代未聞のゴール連発にスタンドが静まり返った。トトゴール初日となった8日、ナビスコ杯開幕の京都-大分戦で、大分が守備を放棄してゴールを許した。ことの発端は、相手に返すべきボールを大分MFロドリゴ(27)が得点したこと。直後に大分小林伸二監督(42)は守備陣に「プレーを止めろ」と指示しお返しゴールを献上。京都が3-2で勝利したが、この両チームの得点によりトトゴール当選確率は大幅に下がり、波乱の幕開けとなった。

 異様な光景だった。後半18分。キーパーまでもが棒立ちだった。完全に守備を放棄した大分ゴールに、京都MF中払がペナルティーエリアの外から軽く蹴り込むと、弱々しげに2点目が突き刺さった。サッカーで決してあってはならない献上ゴール。「0にした方がいいと思って…」。今年J1に昇格したばかりの大分が、小林監督の「プレーを止めろ」の指示でノーガードのまま京都に同点弾をプレゼントした。

 そのわずか1分前。小林監督はベンチから怒鳴り声を上げていた。「ロドリゴ、何してんねん!」。大分FW高松が負傷し、京都MF松井がプレー中断のためにボールを外に出した直後だった。普通なら、逆に大分から京都にボールが渡るはずだが、DF若松のスローインからMF寺川が相手GKに返すために蹴ったボールをMFロドリゴがさらって突然ドリブルを開始。京都DF陣を抜いてゴールに向かい始めたのだ。

 スローインで相手にボールを返す行為は明文化こそされていないが暗黙の了解。が、ロドリゴが左足を振り抜かれた時、棒立ちの京都DF陣が慌てても後の祭りだった。観客、選手、誰もがア然としたゴール。ロドリゴは「ゴールはゴール。自分が決めたかった」。小林監督も「得点せざるを得ない状況だった」と勝ち越しとなったゴールを認めた。

 しかし、事態はこれでおさまらないからややこしくなった。「サッカーをやってる以上最低限のこと」。FW黒部が怒りをあらわにすれば、GK平井も「キーパーは失点が1と2は違う。交通事故にあった気分」。両チームに一触即発ムードが漂い、アンフェアーなプレーを認識した大分・小林監督が今度は、フェアプレーを誤解されてもおかしくないお返しゴール指示となった。結果は3-2で京都の勝利。この結果に吉田達法マッチコミッサリー(59)は「(大分ゴールは)ルール上一切問題はない。乱用されては困るが(京都ゴールも)いい意味でフェアプレーの延長線上。協会には事実を報告するだけ」と話した。

 この余波はファンがモロに被ることになった。この日はトトゴール初日。京都が珍事なしの2点止まりなら27・25%の支持率が、3得点で5・71%に。同じく大分も40・90%から13・07%に下がり、4億円以上を売り上げたトト当選の確率は大きく変わった。しかし、小林監督はこう話した。「トトゴール? 気にしていない。それは結果であって、点数を考えてプレーするほうが逆に問題」。01年にスタートしたトトが売り上げ増を狙って導入したトトゴールだが、後味の悪いスタートとなった。

※記録と表記は当時のもの