実践学園が延長戦にもつれ込む激闘を制して5大会ぶり3度目の出場をつかんだ。

 チーム全員の気持ちがひとつになった。後半31分、実践学園MF浦寛人(3年)が一発退場となり、10人での戦いを強いられた。ボランチとして攻守を支えてきたチームの要は、号泣しながらピッチを去った。キャプテンのDF尾前祥奈(3年)は「(10人になり)余計にやってやろうという気持ちになった。全員がそう思っていたと思う。最後まで走って、後悔しないように命をかけてやりました」。人数が減っても攻撃の手は緩めなかった。

 10人になった直後、深町公一監督からはセットプレーを狙うよう指示が出ていた。決勝点はまさに狙い通りの形から生まれた。

 スコアレスで迎えた延長後半アディショナルタイム。CKのこぼれ球に詰めたFW武田義臣(3年)が値千金の勝ち越しゴールを奪った。相手の猛攻をしのいだ末に手に入れた1点だった。

 人数が少なくても決して慌てることはなかった。しかし、実は数的不利の10人で戦うのはこの1年では初めて。深町監督は「よくやってくれた。全員が彼(浦)の分まで走ろうと体を張ってくれた」と試合中に生まれたチームの一体感に目を細めた。

 退場していた浦は、決勝ゴールの瞬間は控室にいた。「試合は見られていませんでした。ずっと祈っている状態で。サポートメンバーがついてくれていて、点が入ったことを教えてくれた。感謝しかないです。全員にありがとうと言いました」と安堵(あんど)の表情をみせた。

 今回の退場で、本大会の初戦は出場停止となる。「できるサポートを全力でやって、勝ってくれることを祈っています」。この借りは、全国の舞台で返すつもりだ。