名将が1年でJ1復帰のために采配を振るう。今季からJ2アルビレックス新潟の指揮を執る鈴木政一新監督(63)の就任会見が10日、新潟市内のデンカビッグスワンスタジアムで行われた。02年に磐田で史上初の前期、後期完全優勝を果たした実績の持ち主だ。新潟は昨季J1で17位に終わって降格。今季は03年以来となるJ2での戦いになる。鈴木監督は「クリエーティブでアグレッシブなサッカー」を掲げてチームを改革し、J1復帰と将来の基盤づくりを目指す。

 張りのある声が会見場に響く。約1時間の会見で、鈴木新監督は18個の質問に答えた。身ぶり手ぶりをまじえ、時には右手に持ったマイクを口元から離し、地声で応答。言葉を重ねるたびに熱を帯びていった。

 冒頭では、目標と目指すサッカーを明言した。「当然、J1復帰。そのためにクリエーティブでアグレッシブな攻撃サッカーをやる」。状況に応じて個、グループ、チームのどこで打開、またはボールを奪うのか。その判断を瞬時に行い、攻守を連動させる。「選手にもハードルを持ってもらう。オールマイティープラス、スペシャリストの選手になってもらう」。そして「ハードなキャンプになる」と、17日からの高知キャンプの厳しさを示唆した。

 チームづくりに安易な突貫工事はしない。「状況によって、どの材料を使うかの予測と決断が必要。その判断を瞬時に行うようにならなければ」。浸透するまで時間がかかる内容だ。それでも、勝ち点が伸びない時期があっても「私はぶれない」。質の高さを求め続けることで、J1復帰と定着への基盤をつくっていく。

 途中就任を含めて4季務めた磐田の監督時代、02年の完全優勝などJ1通算73試合で59勝6分け8敗。勝率は8割を超える。「これだけ具体的、本格的にサッカーの話をした会見は初めて」。同席した中野幸夫社長(63)は明確な指針を持つ名将に、あらためて敬意を表した。

 15年から日体大の監督を務めていた。「最後は(故郷の)山梨のため、母校(日体大)のために、という気持ちだった」。そんな中で昨秋、新潟から次期監督のオファーをもらった。「中野さん、強化部長の木村(康彦)さんの話を聞いて、新潟なら、と思った。チーム、クラブ、サポーターが一体となって戦える」。J1復帰にかけるクラブ幹部の思いを受け止め、監督を引き受けた。

 リスクは覚悟。結果次第で簡単に解任され、過去の実績に傷がつく例は嫌というほど見てきた。それでも新潟を勝負の場と決めた。「多くのサポーターに足を運んでいただきたいです」。決意を満員のスタジアムで示す日を楽しみにしている。【斎藤慎一郎】