「魔の立ち上がり」となっていた今季の鹿島。そこで、強い覚悟が見て取れた。

 左サイドのDF安西幸輝のスローインから始まったプレー。FW鈴木優磨が頭でそらして、FW金崎夢生がボールをキープした。中央の鈴木に渡すと、ボールは右のMF遠藤康へ。その瞬間、右サイドをDF内田篤人がトップスピードで駆け上がった。長崎の選手がついていけない。そこに縦パスが出た。中を見れば、3人もいる。「ゴロか、頭か。とりあえず、速いボールをマイナス(の角度)にと思っていました」。

 走り込んだのは、鈴木だった。ほんの少しバックステップを踏みながら、頭で角度を変える。「(内田は自分を)常に見てくれているし、オレも見てほしいと言っているので、そういう形が出た」。先制点が生まれた。内田のJリーグ復帰後、初アシスト。そして、鈴木のリーグ3点目。それはわずか前半4分のことだった。

 前節、横浜F・マリノスに0-3で大敗。チームは15位まで落ちた。先制点を許すと、リズムを見失う。同点でも、まるで負けているかのような雰囲気になる。負の流れに覆われていた。それが、この日はなかった。

 前半18分に、同点に追いつかれた。DF昌子源がマークを外されて、FW鈴木武蔵に同点ヘッドを決められた。だが「あの失点は時間帯的にも痛かったが、自分自身、気持ちを切らさずにできたのが良かった。チーム全体としても、みんな上を向いていました。マークを離した張本人が下を向いていないので」と昌子。その気持ちがチームに伝染した。前半30分の金崎の勝ち越しPKは、昌子の鋭い縦パスを金崎がそらして、受けた遠藤が倒されて得たもの。今季初めて1-1から勝ち越した。負けられない。その思いが出た試合だった。

 昌子は言う。「僕自身の意見ですが、残留争いなんて全く考えていない。優勝争いのことばかり考えていますし、優勝争いどころか、優勝のことばかり考えています。それができると信じていますし、不可能ではないと思う。それには勝ち続けないといけない。この勝利は大きいが、1つ勝っただけですし、連勝もしていない。次に切り替えてやっていく」。強い決意を示した。