カシマスタジアムには、試合前から大きなブーイングが飛び交った。浦和レッズのFW興梠慎三の名前が呼び上げられたとき。何より、オズワルド・オリベイラ監督の名前が呼び上げられた瞬間に、ひときわ大きく-。

 鹿島アントラーズを07年から5年間指揮し、史上初の3連覇に導いたオリベイラ監督が7年ぶりに“帰還”した。ライバルチームの監督として。その両チームの初めての試合。さらに、同監督になって初めての連勝を狙う浦和と、今季初めての連勝を狙う鹿島。多くの要素が絡み合う中で、試合は始まった。

 9日にACL上海上港戦を控える鹿島は、メンバーを入れ替えてきた。右サイドバックにはDF内田篤人ではなく、西大伍を起用。MF土居聖真もトップ下に復帰させた。一方の浦和はけがをしたFWアンドリュー・ナバウトに代わって武藤雄樹を興梠の相棒に据えた。

 前線から激しく行く鹿島と、縦に速く攻める浦和。試合が動いたのは前半24分だった。浦和DFのクリアボールを拾った土居からダイレクトパスを受けたMF永木亮太が、ペナルティーエリア内でうまい反転。そこを浦和MF青木拓矢に倒されてPKを獲得した。FW金崎夢生が冷静に左に決めて、同25分に鹿島が先制した。

 浦和も同36分、ビッグチャンスを得る。バックパスの処理を誤った鹿島DF昌子源からボールを奪ったMF橋岡大樹がGK曽ケ端準と1対1に。しかし、曽ケ端のビッグセーブに遭い、好機を逸した。

 後半に入ると、浦和をアクシデントが襲う。司令塔のMF柏木陽介がアクシデントによって自ら交代を求めて、15分に退いた。

 一方の鹿島は前線から追わずにブロックを敷いて守る。選手交代を重ねながらの攻めと守りは、互いに激しさを増すばかり。特に浦和はMFマルティノスを前線に据えて、MF阿部勇樹も攻撃的な位置に投入。怒濤(どとう)の攻めを見せた。後半43分にはDFラインの背後を取ったマルティノスが切り返しから決定的なシュートを放つ。ただこれは力なくGK正面。守りきった鹿島が今季初の連勝を飾り、浦和のオズワルド監督は久しぶりのカシマスタジアムで勝利を収めることはできなかった。