川崎フロンターレがMF斎藤学(28)の移籍後リーグ初得点などでヴィッセル神戸との打ち合いを制し、連覇へ大きく前進した。MF阿部とMF守田を累積警告による出場停止で欠く苦境の中、一時は1-3とリードを許したが、スペイン代表MFイニエスタを擁する神戸に後半猛攻。5-3と逆転し、6戦負けなしで勝ち点を60に伸ばし、2位サンフレッチェ広島との差を4に広げた。

チームもサポーターも待っていた斎藤のゴールだった。裏に抜けだした斎藤は、MF家長のパスを受けるとそのままドリブルで仕掛け左足でズドン。ベンチもピッチ上の選手もスタンドもお祭り騒ぎで祝福する。10月の初弾に斎藤は「遅いでしょ」と苦笑し「1対1を抜けて、点が取れたのは良かった。個人的にやっと点を取れたのでうれしかった」と笑みを浮かべた。

横浜在籍時の昨年9月23日、甲府戦で右膝前十字靱帯(じんたい)損傷で全治8カ月の大けがを負った。その中で、川崎Fから2年連続のオファーを受け今季加入。横浜で背番号10を背負ったチームの顔の移籍に、横浜サポーターから激しいバッシングを浴びた。だが「僕を敵にすることでマリノスを守ってるのだったら、それはそれでいいこと」と受け止めた。川崎Fの練習場に、横浜のユニホームを持って訪れる横浜サポーターにも励まされた。

予定より早い5月に公式戦復帰したが、個で打開する持ち味の斎藤が、川崎Fのパスサッカーに融合するまで時間を要した。7月の天皇杯・水戸戦で先発したが、持ち味の仕掛けや裏に抜ける動きを出せずに終わり「自分でチャンスをつぶした自分の責任。メンタル的な問題だった」と振り返る。以降ベンチの時間が長かったが「やることは変わらない」と迷わなかった。

MF阿部の出場停止で、リーグ戦で5カ月ぶりにつかんだ先発のチャンス。果敢に裏に抜けドリブルで仕掛け存分に自分を出し、結果を残した。MF中村は、得点後の斎藤の動きを挙げ「1点取った後のプレーがいつもの斎藤学。このまま川崎の斎藤学としてやってくれれば問題はない」と太鼓判を押した。

広島が敗れ、勝ち点差を4に広げた。連覇に向け残り4試合。斎藤は「まず試合に出ることが難しいチーム。ベンチ外の日々もあるかもしれない。そういう競争の中でピッチに立ってる思いはもってやってる」と自ら言い聞かせ「少しでもチームの力になれれば」。待ち望んだ得点が、連覇へ大きな推進力になる。【岩田千代巳】