“シンデレラボーイ”が勝ち点1に貢献した。アルビレックス新潟の19年シーズンは京都と0-0の引き分けで始まった。ルーキーのDF新井直人(22)がセンターバックでスタメンデビュー。的確な守備で相手の攻撃を防いだ。練習生として高知キャンプ中に参加し、9日に入団が決まったばかりだが、開幕と同時に一気に戦力にのし上がった。今季のテーマでもある「負けない試合」を実現する重要なピースになった。

   ◇   ◇   ◇

心地よさと、少しの悔いが入り交じった。「アウェーで勝ち点1は良かったけど、相手のチャンスの芽はもっとつぶせた」。試合後、新潟から駆けつけた1500人のサポーターにあいさつを終えた新井はプロとして初めて戦った90分を実感した。「(スタメンは)うれしかったし、ピッチに入ったらここからがスタートだと感じた」。引き締まったメンタルは随所にプレーに表れた。

京都の得点源、FW宮吉拓実(26)にマーク。「フリーで持たれないように」と食らいつき、前を向かせない。シュート0に封じた。後半、京都が184センチの元日本代表・DF闘莉王(37)を前線に入れ、パワープレーに出た。「相手の高さを考えず、上からたたく」。新井の身長は173センチだが、垂直跳びは70センチ以上。バネを生かして闘莉王の上からヘディングで防ぐ。

「能力があるからスタメンで使った」。片渕浩一郎監督(43)は抜てきに迷いはなかった。新潟経営大の卒業は決まっていたが、明確な進路は決まっていなかった。J3クラブの誘いを断って練習生として新潟の高知キャンプに参加した。入団が決まったのが今月9日。開幕2週間ほど前に最後の33番目の選手として加入。「やるからには開幕スタメンを狙った」。チームメートと同じ扱いになり、スタートラインに立てば遠慮は必要ない。左右どちらの足でも蹴ることができる器用さと、守備的なポジションならどこでも守れる対応力を練習からアピール。スタメンを勝ち取った。

片渕監督は「0に抑えれば負けない。昨季の19敗を、どれだけ引き分け、勝ちに変えられるかが大切」と負け数を減らすことを重視。まず実践できた。「勝てた内容ではあった」(片渕監督)と無得点に終わった部分は第2節千葉戦(3月3日・フクダ電子アリーナ)への課題。新井は「勝ち切れなかったので自己採点は10点満点で5か6。今度は勝ちたい」。自身のプロ初勝利を次のターゲットにした。【斎藤慎一郎】

◆新井直人(あらい・なおと)1996年(平8)10月7日生まれ、東京都出身。実践学園では全国高校選手権東京大会Bブロックで準優勝。新潟経営大に進み、1年でレギュラー。主に右サイドバック、センターバックで公式戦出場した。ポジションはDF。173センチ、73キロ。背番号32。