J2アルビレックス新潟で今季限りの退任が決まっている吉永一明監督(51)が25日、今季の総括会見を聖籠町の新潟聖籠スポーツセンターで行った。

4月、片渕浩一郎前監督(44)の解任後に新潟のアカデミーダイレクターから後任監督に就任。第10節から指揮を執ったが、チームは10位でJ1昇格を逃した。責任を取る形で退任になったが若手の成長を促しながら戦い方を固め、来季につながる流れを作った。チームの成長に期待をかけ、サポーターへの感謝を示した。

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目指したサッカーを説明して、吉永監督は指揮した7カ月を総括した。会見場に就任直後のミーティングで選手に見せたパワーポイントを用意。「どういうことをやってきたのか、何をやりたかったのかを知ってもらうことは必要だと思いました」と自ら解説した。

「全員攻撃・全員守備」を掲げた。攻撃は速攻、それがだめなら全員でボールを運ぶ。守備では相手コートでボールを奪いに行き、それ以外では組織で守ることを明示。「全力疾走する場面はいちばん新潟らしさが出せる。そこで戦い続けることはクラブのアイデンティティーとして絶対に残していかなければいけないと思った」と話した。

-掲げた方針は自身の経験からか、チームに合わせたものか

吉永 両方です。アルビらしさとは漠然としたもので言語化できない。いろんなことを考えながら作った。こだわったのは攻守の切り替えのところ。そこではバトルが発生する。そこで負けないというのは自身のサッカー観でもあり、新潟の強みであると思います。

-結果と成長の両方を求められたが

吉永 早急に昇格させるだけなら(監督は)僕ではないと思った。それにプラスアルファが求められたと思っていた。

-やりたかったサッカーが表現できた試合は

吉永 ベストゲームとか、そういう感覚はないです。それぞれの試合で進化していた。その印象の方が強い。ただ感覚としては7、8割の出来。ケガ人もいて、ベストチームを組めなかったのが残念でした。

-初のJ監督を経験して感じたことは

吉永 途中から指揮をする難しさを感じました。結果が出ているクラブはビジョンがあって、それに合った監督、選手編成があり、キャンプから始まる。そういうクラブは来年の戦いへ、すでに準備が終わっていると思う。1年前にほぼ勝負が決まっているくらいで臨むクラブが上位にいると感じる。

-片渕前監督の退任に周囲の戸惑いがある中で就任したことには

吉永 人生でいちばんしんどかったかもしれない。ただ現場は楽しかった。選手は理解しようとやってくれた。昇格がなくなっても一生懸命やってくれました。

-新潟サポーターへ

吉永 素晴らしいサポートをしていただきました。ホームで強いアルビになることを意識した。相手チームが嫌だなと思われるチームであって欲しい。それを感じられるほど熱量のあるサポーターです。

吉永監督は最後に言った。「J1に昇格するのはチームではなく、クラブ。監督は結果に対する責任からは一切逃げない。ただ、それだけではどうにもできないし、昇格もできないし、定着もできない。それは理解していただきたいです」。来季J1昇格を実現するための1つのポイントを挙げて締めくくった。【構成・斎藤慎一郎】

◆吉永一明(よしなが・かずあき)1968年(昭43)生まれ、福岡県出身。福岡・八幡中央高から福岡大に進学。卒業後、90年に三菱養和のコーチに就任。福岡の下部組織監督、清水のヘッドコーチ、鳥栖の育成統括、甲府のヘッドコーチなどJクラブのスタッフを歴任。17、18年はシンガポールプレミアリーグ新潟シンガポールの監督として2年連続国内全冠制覇を達成。19年は新潟のアカデミーダイレクターを経て、4月14日にトップチームの監督に就任。第10節東京V戦から指揮を執った。就任後のリーグ戦成績は14勝8分け11敗。