静岡学園が真の日本一になった!! 連覇を狙った青森山田を3-2で撃破。2失点後の大逆転劇を演じた。DF中谷颯辰(そうしん、3年)が2得点。今大会初先発のFW加納大(はる、2年)が2-2とする同点弾を決めた。

95年度大会は鹿児島実と両校優勝。伝統の攻撃的スタイルを貫き、四半世紀かけて「単独」の悲願をかなえた。前日12日には藤枝順心が全日本高校女子選手権を制し、県勢初のアベックV。静岡でサッカーが始まった1919年静岡師範学校蹴球部創設から100年の節目に、王国復活をアピールした。

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勝利のホイッスル鳴り響くと、5万6000人で埋まったスタジアムは大歓声に包まれた。ベンチからは控え選手が一斉に飛び出し、瞬く間にピッチに歓喜の輪が広がった。首都圏開催となった76年度以降、決勝で90分以内に2点差逆転勝ちは初。連覇を狙う王者相手に大逆転劇を演じた。

2点差を追い付き迎えた後半40分。中谷がMF井堀のFKを頭でたたき込んで決勝点を決めた。「最初はニアに入るつもりだったが、直感が働いた。一瞬の判断でファーに流れた」。得意のセットプレーで優れた得点感覚を発揮。逆サイドでフリーになっていた。

前半33分までに2失点。劣勢に立たされた。2点差でハーフタイムに突入するかと思われたが、同ロスタイム。FKのこぼれ球を中谷が右足でゴール左下へ流し込んだ。「DFとして失点の責任を感じていた。前半の内に点を返せなかったら、流れはつかめなかった」。逆転劇を呼び込む追撃の一発を決めた。

今大会6試合で19得点2失点。川口修監督(46)は「攻撃こそ最大の防御」と強調する。いかなる相手でも、個人技を主体とした攻撃的なサッカーで、主導権を握るのが信条だ。圧倒的な攻撃力を持つ静学に対し、引いて守りを固めるのが対戦相手の常とう手段。「守られるのは想定済み。守備を崩せるアイデアを持ったチームを育ててきた」。全国舞台の決勝で、その成果が結実した。

静岡県勢として11度目の優勝を飾った。80年大会からの10年間で優勝4度、準優勝2度。黄金期を築き「サッカー王国」の名をほしいままにしてきた。しかし、直近は4大会連続で初戦敗退を喫していた。川口監督は「昔の静岡は勝負強さの中に個の力があった。最近は勝負に徹するあまり、個の育成がおろそかになっているのでは」と、低迷の要因を分析した。流れに逆行して静岡学園は常に個の育成に重きを置き、全国の頂点まで駆け上がった。中谷も「王国復活に向けて一歩踏み出せた」。鮮烈な印象を残し、王座に就いた。【古地真隆】

▽今大会4得点のMF小山尚紀(3年) 後半は自分たちがボールを持てて、相手が嫌がる攻撃ができました。

▽2点目を演出したMF草柳祐介(3年) 自分のプレーをするということを意識していた。途中から出て貢献できました。

▽最後方で守備を支えたGK野知滉平(2年) 本当は無失点で優勝したかったけれど、攻撃陣が頼もしく感じました。

▽初優勝時に1年生守護神だった横浜FC・GK南雄太 当時は両校優勝で決着をつけたい気持ちが強かった。24年後に単独優勝してくれて気持ちが晴れた。今のプロでもあれだけドリブルするチームはない。伝統の個人技に組織力がブレンドされて素晴らしいチームになった。

▽OBで川崎FのMF長谷川竜也 (ツイッターでOBのMF大島との2ショットを載せ)静学に関わるすべての皆さま! 本当におめでとうございます。(キャンプ地の)宮崎で見てました。そして感動しました! 本当によかった!

▽初優勝時の主将で柏などでプレーした森川拓巳氏(札幌U-18コーチ) 2-0から追いつかれての両校優勝で完全に敗戦ムードだった。鹿実は胴上げしていたけど、ぼくらは初優勝にもかかわらず井田さん(現総監督)を胴上げしなかった。24年間、ずっと心残りだった。単独優勝はめちゃくちゃうれしいし、試合後に友人から井田さんの胴上げ写真が送られてきてやっと心の重みがとれた。

◆静岡学園高等学校 1966年(昭41)に静岡市聖一色で創設。普通科と商業科(93年に募集停止)を持ち、71年に理数科を加えた。78年に中学校開校。2011年に静岡市葵区東鷹匠町に移転し、2学科を教養科学科に統一。進学情報サイトによると、生徒数は男子708人、女子331人。サッカー部は67年創設。鈴木啓之校長。