J1清水エスパルスなどでプレーした鍋田亜人夢(あとむ)氏(28=日体大4年)が、教員への転身を目指している。2016年の現役引退後、大学に進学。体育教師を志し、猛勉強中だ。今春からは清水東高サッカー部の「学生臨時コーチ」を務め、自身の経験を選手に伝えている。「生まれ育った地元清水で恩返しをしたい」。元Jリーガーの第2の人生に懸ける思いを聞いた。【取材・構成 神谷亮磨】

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28歳の鍋田氏は、大学生として指導の現場に立っている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で現在は休校中だが、3月下旬からは清水東高コーチに就任。立場は、選手から教える側に変わった。目標は、教員として地元清水で指導を行うことだ。

鍋田氏 第1志望は教員になることです。今は一般企業への就職活動も並行しながら、進むべき道を模索している段階。コロナの影響で日程が確定しませんが、教育実習も控えている。そこに向けた準備をしながら、教員採用試験に向けた勉強を毎日しています。

-2014年に契約満了で清水を退団した

鍋田氏 その後の1年間はアルバイトをしながら国内外のトライアウトを受けていました。J2山口やJ3沼津の練習にも参加させてもらいましたが、契約できず…。その時期に、元日本代表のMF本田圭佑さん(33)が運営する東京のクラブチーム「STFC」からコーチの打診がありました。

-子どもたちを指導したことが転機になった

鍋田氏 主に中学生を教えていく中で、指導の面白さを感じました。サッカーだけを教えるなら「コーチ職」で良かったのですが、サッカーは人間的な関わりが大事なスポーツだと感じました。人と人をつなぐツールがサッカー。人とのつながりの中で選手の成長を近くで見ていきたいという思いになり、17年から日体大に通って教員を目指すことにしました。

-Jリーガーから大学生に転身

鍋田氏 周りは年下ばかり。ただ、サッカー以外のことは何も知らなかったので、すごく刺激を受けました。もちろん僕が元Jリーガーということも知らない人もいて。自分を客観視できるいい機会になったと思います。

-今後の抱負は

鍋田氏 プロ選手としてチャレンジした経験は良かった。その部分をうまく伝えながら、自分から動いて発信できる選手を育成していきたい。自分も生まれ育った清水、静岡を盛り上げて恩返ししたいです。

◆鍋田亜人夢(なべた・あとむ)1991年(平3)5月1日、静岡市清水区生まれ。名前の由来は「アジア(亜細亜)に夢を与えるような人になってほしい」との父親の願いから。清水第八スポーツクラブでサッカーを始め、清水ジュニアユース-同ユース。09年は県選抜メンバーとしてSBS杯出場。10年にトップチーム昇格。14年途中にJ2福岡へ期限付き移籍。16年2月に現役引退。J1通算13試合出場、J2通算8試合出場。現在は日体大体育学部体育学科の4年生。血液型A。