新型コロナウイルスの影響で全国高校総体(インターハイ)が中止になった。Jクラブの下部組織(ユース)も公式戦再開が不透明で、選手のアピールの場が失われている。その中で、志望大学へプレー動画を送るなど、知恵を絞り夢へ向かう高校生たちもいる。大学サッカーでは視察困難な状況下で、どうスカウト活動を行うのか。昨年、8人のプロ選手を輩出した法大サッカー部に話を聞いた。

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法大は昨年、天皇杯でベスト16に進出し、鹿島アントラーズFW上田綺世、FC東京MF紺野和也ら8人をJリーグに送り出した。今年も既に3人の4年生がJリーグに内定。大卒選手が1年目からプロで活躍するケースが多い中、高校生にとって進学は重要な夢への1歩だ。試合でのアピールの場がない今、志望大学へ自身のプレー動画を送る選手もおり、法大にも届いているという。

法大の長山一也監督は「何人かは見させていただいています」とし「高校の指導者の方は手間がかかると思いますが、ぜひ見させていただければ」と動画も選考の1つになる考えを示した。過去に高3の春に負傷し長期離脱した選手が、2年生時の試合のプレー動画が参考になり入部した例もあった。スカウト担当の野木健司氏も「練習試合の3、4本目に出ていて、目に留まって来てもらっている選手もいる。練習試合でもいい。映像を見て判断するところもつくっていきたい」と新たな形の発掘に積極的だ。

高校年代は特に3年での伸びが大きい。強豪校で1、2年生で定位置をつかむのは難しい背景もあり、3年時の大会で頭角を現す選手が多い。鹿島FW上田は、鹿島学園高3年時に練習参加して輝きを放ち、入学につながった。J3カターレ富山へ加入したMF末木裕也とFW松沢彰も高校3年での活躍が野木スカウトの目に留まっている。

スポーツの推薦入試は例年11月で「全国大会出場」などの条件もある。夏の大会が中止になった影響に加え、新型コロナウイルスの状況が見えず、実際、指導者からの問い合わせも多い。長山監督は「学校側が、スポーツ推薦入試に必要な競技成績の基準を特例も含めて柔軟に検討してくれている。その部分はホームページでも出していく必要がある」と話した。

今夏は志望者のプレーを直接見るべく、セレクションも予定している。指揮官は「基本的にはゲームをしないと見られない部分がある。3密(密閉、密集、密接)を避けるやり方も考えなくてはいけない」とウイルス対策も思案している。志望者との面談は例年通りの重要な要素だ。また、野木スカウトは高校やユースの指導者と密に連絡を取り、練習が再開次第、動画で目についた選手や指導者が推す選手の元への練習視察を計画。野木スカウトは「今、出来ることを見つけて頑張ることによって、道は開けると思います」と話す。

大学は4年生が卒業し1年生が入学するのが常。長山監督に、進学を目指す高校生へメッセージをもらった。「うちだけでなく、大学全体で枠はあると思います。選考の仕方が変わるだけであって、入るチャンスがあるのは例年と変わらない。今、できることをしっかりと準備して、今後の練習参加、セレクションのための準備をしてほしい」。【岩田千代巳】