2月26日のJリーグ開幕まで、あと2週間。今季もコロナ禍でサポーター、選手、クラブと誰もが我慢を強いられる。そんな過酷な新シーズンを目前にして、Jリーグはとても大事なことを忘れていないか。昨年9月、あるJリーガーが、交際中の女性を暴行した事件があった。当時、所属クラブは選手への事情聴取を終え、Jリーグにどう対処すべきかを問い合わせた。Jリーグは被害者との示談が成立していたこと、被害者が公開を望まないなどの理由から、非公表を指示した。要するに隠蔽(いんぺい)した。

被害者が特定されないように発表する方法はいくらでもある。女性への暴力に対するJリーグの手ぬるい姿勢もあり、クラブは数試合出場自粛など選手への処分は大甘になった。Jリーガーによる女性へのドメスティックバイオレンス(DV)は世間に知られずに1カ月が過ぎた。仮に風化し、なかったことになっていたら、その選手は今季も女性サポーターの声援を受けながらJリーグのピッチに立っていたかもしれない。ところが、同10月に一部でその事件が報道され、世間に知られると、Jリーグは急きょ会見の場を設けた。

村井満チェアマンは、発表が1カ月も遅れた理由を「最初の報告と今の報告で違いがあった」と説明。「最初の報告で女性への暴行」との説明があったかの質問には「まだ調査中で詳しいことは言えない。調査が終わったらまた報告します」と繰り返した。その直後にそのJリーガーは「最初の事情聴取で隠した事実があった」との理由で、クラブから解雇された。

それから4カ月。調査が終わったら報告するとしながら何ら公式発表もない。東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は女性蔑視発言で世界中から非難を受け、辞任した。選手による女性への暴力を隠そうとしたJリーグ。何の責任も負わないまま新シーズンを迎えようとしている。

今のままなら、Jリーグが主張する「女性と子供に優しいスタジアムづくり」のうたい文句は、むなしく響いてしまう。Jリーグは新シーズンを迎える前に暴行問題にきちんと対応し、けじめをつけてほしい。同時に、隠蔽の最終判断を下した幹部への重い処分を求めたい。【盧載鎭】