100回目という記念大会に、日本サッカー界のレジェンド中村俊輔の母校・桐光学園が名乗りを上げた。初優勝を狙った相洋を相手に、前半8分にMF三原快斗(3年)が頭で押し込み先制すると、後半29分にMF豊田怜央(2年)も頭で合わせて加点し、2-0と勝利した。3大会ぶり12度目の全国切符を手にした。

試合の大きなポイントとなったのは、後半8分だった。1点リードしていた桐光学園は、自陣ペナルティーエリアすぐ外で相手選手を倒し、FKを与えてしまう。相洋のキッカー、MF後藤康介(3年)のシュートは壁をきれいに越え、対角のゴール左上角へ飛んだ。ゴール裏から見てもパーフェクトな軌道。同点ゴールが決まったか、と思われた瞬間、桐光学園GK吉田優翔(しゅうと、3年)の伸ばして手がボールをゴール外へとはじきだした。

まさにビッグセーブ。「吉田シュート」ならぬ「吉田セーブ」が飛び出した。1点を追い、相洋の攻勢に出ていた時間帯。同点とされれば、また違った展開になったかもしれない。押し込まれたこの時間帯を守り抜いたことで、終盤の追加点につながった。

鈴木勝大監督も「勝負の分かれ目になった。(勝利の)1つのポイント。ここで同点とされていたら、逆転までされていたかもしれない」。インターハイ制覇を経験する名将が、そう振り返った場面だった。一方で「彼なら、あれくらいのシュートは止めてくれる。プロになれるほど高いポテンシャルを持っている」と期待値の高さを口にした。

決勝を前にチームには、プロとして活躍する偉大なOBたちが足を運んでくれたという。中でも日本サッカー界のレジェンド、中村の存在は特別だった。その中村が部員を前に、決勝に臨む心構えを説いてくれたという。

「こういう舞台では、ここまで積み上げてきたことを追求していけ」

昨年、U-17(17歳以下)日本代表合宿にも呼ばれたMF山市秀翔(3年)が言う。「勝利の女神は細部に宿る、と話してくれました。チームにとって励みになりました」。桐光学園がこだわってきたのは「泥臭さ」。球際、攻守の切り替え、運動量がチームのベース。中でも山市はこの試合中、何度も声を張り上げていた。

セットプレーを得意とする相洋に終盤押し込まれ、何度もCKのピンチを迎えると、仲間に向かって声を張った。「相手のペースに絶対させないよう、とにかく叫び続けました。世代別代表に呼ばれ、学んだことがピッチ内で自己解決能力を高めること。主体的に自分たちでやっていかなければいけない」。集中を切らさず、泥臭く気持ちも体も張ったチームは、相手にスキを与えず、完封勝利に持ち込んだ。

過去2年は県大会の決勝で敗れていた。加えて、この決勝の相手となった相洋には夏のインターハイ予選で敗れていた。それだけに鈴木監督は「100回目の記念大会だから出たということでなく、98回、99回と過去2年、県のファイナルで落としていたので、三度目の正直。(悔しさを)きちっと晴らしたいというモチベーションが高かった。3年生のここにかける思いが出た」と話した。

3年前のFW西川潤(セレッソ大阪)のような飛び抜けた選手はいないが、誰もが確かな技術を持ち、ハードワークをいとわない。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を地で行くチームは、偉大な中村(1996年度の第75回大会で準優勝)でも成し遂げられなかった全国制覇へと歩を進めていく。【佐藤隆志】