低迷する神戸が、今季2勝目を逃した。ホームで圧倒的に攻めながらも得点を挙げることができず0-0で磐田と引き分けた。シュート数は神戸の16に対し磐田は4本。敗れた前節湘南戦に続き、残留を争う相手から勝利を奪えず最下位のまま。23日に練習場を緊急訪問して選手を激励したオーナーの三木谷浩史会長(57)がこの日も会場に姿を見せたが、浮上のきっかけがつかめない。

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これが残留争いに巻き込まれた負の連鎖だろうか。ゴールが、勝利が遠い。後半18分、イニエスタのスルーパスを左に流れた武藤が中央へ折り返す。ゴール前の絶好機、リンコンのシュートはバーを超えた。同27分のイニエスタのミドルは右へそれる。16本のシュートは1本も入らない。推定年俸20億のイニエスタに、2億円の武藤。W杯を経験した山口に酒井…。スター軍団がもがき苦しんだ。

「勝つためにすべきことはすべてやった。唯一、ゴール前の命中率だけが足りなかった。このやり方を信じてやり続ければ、その時(勝利)は来る」

イニエスタの言葉が全てだ。やるべきことはやった。だがそれでも勝てない。

前節湘南戦(21日)は残留を争う相手に敗れ、再び最下位に転落。わずか1勝の緊急事態に、三木谷会長が23日に神戸市内の練習場を緊急訪問した。選手を集め、涙ながらに「すべてを懸ける思いでやってほしい」と激励。この日も視察に訪れたが、17位湘南とは勝ち点5差まで広がった。

歯車がかみ合わない。前半31分にカウンターで3対2の場面を作るも、イニエスタから武藤へのパスが右に流れてチャンスをつぶす。8分後に酒井が左サイドを突破した速攻もイニエスタが出遅れた。理想の攻撃と現実にギャップがあるのも事実。酒井は「何を言っても勝たないと意味がない」。ロティーナ監督は「得点を決める運がなかった。低い目標(残留争い)で戦わざるを得ない時は自信を失い、焦りが生まれるものだ」と険しい表情だった。

暗闇の出口はあるのか-。このままではJ2降格が現実味を帯びてくる。【益子浩一】

<今季の神戸の苦闘>

◆3月19日 清水戦に引き分けて、開幕7戦で4分け3敗と未勝利が続く。

◆同20日 三浦淳寛監督の契約解除を発表。

◆同21日 コーチから内部昇格の形でリュイス暫定監督が就任。空位だったスポーツダイレクターに永井秀樹氏が就任したが、昨年までのJ2東京V監督時代にパワハラ認定を受けたことに、一部サポーターからは反発の声が上がる。

◆4月2日 三木谷会長と永井SDが、京都戦前に本拠ノエスタで約30人のサポーターに事情を説明。

◆同8日 今季3人目の指揮官となるロティーナ監督の就任を発表。

◆5月1日 リーグ最下位のままで臨んだACLで、東地区1次リーグJ組を2勝2分けの首位で突破。

◆同14日 サポーターとの意見交換会にオンラインで参加した三木谷会長は「(負傷者が続出し)もう少し補強が必要だったと思っています」と謝罪。直後の鳥栖に4-0で大勝し開幕12試合目で待望の初勝利。

◆同21日 湘南との“裏天王山”に1-2で敗北。再び最下位に転落する。

◆同23日 三木谷会長が練習を緊急訪問し「一層の覚悟を持って挑んでいただきたい。1センチ、10センチ、1歩、気迫の差だと思う。覚悟と気迫を持って頑張りましょう」とゲキ。引き続き会長職は辞めないとも明言。