22日のルヴァン杯決勝(東京・国立)を控えたセレッソ大阪にとっては、レジェンドOBからの最高の贈り物だった。

15日のベルギー1部リーグで、シントトロイデンMF香川真司(33)にスーパーゴールが飛びだした。シャルルロワ戦の前半、香川が左CKのキッカーを任され、右足で放ったキックが緩やかな曲線を描き、直接ゴールに吸い込まれた。

高校生だった香川をC大阪入団へと導いたのが、当時スカウト担当で現指揮官の小菊昭雄監督(47)。香川は10年5月のJリーグ最後の試合で初の直接FKを決めていたものの、驚いた監督はすぐにLINE(ライン)で祝福した。18日の取材では、監督自身がゴールの感想を語った。

「キッカーとしては、どの監督からも指名されることのないくらいの選手だった。(欧州で今も成長する姿に)歴史を感じました」

その得点の翌16日、C大阪の公式ツイッターには香川からのメッセージ動画が公開された。サンフレッチェ広島とのルヴァン杯決勝に向けた激励だった。

「(準優勝に終わった)去年の悔しさがあると思います。その悔しさを今年、国立のピッチでぜひ晴らしてほしい。心より応援しています。そして、みんなの力でカップをピンクに染めましょう。頑張れ」

事前にメッセージが用意されていたとはいえ、香川のゴール直後という最高のタイミングだった。

今季のC大阪は開幕から3カ月以上、公式戦2連勝が1度あるだけで波に乗れない時間が続いた。その状況下の4月19日、オフで帰国した香川が恩師を頼りに、C大阪の練習に約3週間も参加することになった。ドルトムントに移籍した10年6月以来初めてだった。

香川は大半が面識のないC大阪の選手の経歴を事前に調べ、当時17歳だった下部組織出身のFW北野颯太に「オレが17歳の時より、確実にすごいな」と声をかけた。その北野が今回のルヴァン杯で9試合3得点、新人賞にあたるニューヒーロー賞を受賞した。

C大阪は勝利の確率を上げるため、香川が練習参加した頃から練習でもプレー強度を上げ始めていた。苦しい時期に、スターが練習参加を申し出てくれ、選手の表情は明るくなった。

小菊監督はのちに「真司は、自分の経験をクラブや後輩に還元したかったと思う。彼の愛を感じられて、うれしかった」と振り返っている。

C大阪は5月下旬から約3カ月間、公式戦12勝5分け1敗という快進撃を続けた。選手の頑張りに加え、香川が与えた好影響があったのかもしれない。

この数年は欧州で苦しんできた香川だが、今回の活躍でも進化し続ける姿を証明した。小菊セレッソも開幕前の低評価を覆し、タイトルが目前に迫っている。

「(4月から)一緒にトレーニングをしてくれ、真司は(ルヴァン杯で)本当に優勝してほしいと言ってくれた」と小菊監督。香川の思いに報いるためにも、C大阪は優勝カップをつかみたい。【横田和幸】