来季のJ1から静岡県勢クラブが史上初めて姿を消すことになった。今季のJ1は清水エスパルスが17位で、ジュビロ磐田が最下位。初の「J2ダブル降格」の屈辱となった。直近10年間で2クラブのJ2降格は計5回(清水が2回、磐田が3回)。かつてチャンピオンシップで日本一を争った2チームがなぜ転落したのか。連載「J1消滅の真実」と題し、各クラブ2回ずつ、計4回にわたって考察する。今週は清水編。

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J2降格が決まった5日の北海道コンサドーレ札幌戦後、清水の大熊清ゼネラルマネジャー(58)は謝罪した。GM就任後の3年間は毎年残留争いで、過去最高の強化費を使ったクラブ創設30周年の節目に陥落。自身の去就については「クラブが判断する」と話すにとどめたが、監督人選や選手編成などを任されてきたGMの責任は大きいと言わざるを得ない。

象徴的なのは監督交代だ。クラブは4年連続でシーズン途中に指揮官を解任した。明確なビジョンがある上での決断なら理解できる。だが、目先の結果しか求めていない中ではその先の上積みは期待できない。監督交代劇に振り回された選手の気持ちも考えてほしかった。

そもそも、人選にも疑問が残った。平岡宏章監督(53)が契約解除となったのは5月下旬。後任は約3週間前から水面下で動いていたが、難航した。結果的に候補の3番手だった、ゼ・リカルド監督(51)に決めた。問題はごく限られた人だけで決めたことだ。Jリーグ指導歴がない指揮官の抜てきを不安視する声も少なくなかった。発表する直前まで後任を知らなかった強化部もいたという。多角的な視点で協議する場があってもよかったはずだ。

今夏の補強も4億円近い資金を投じて攻撃的な選手だけを獲得した。フロントの総意は「点を取って勝つチームを目指す」。ただ、1度も勝てなかった9月以降は7戦15失点。残留へ負けられない終盤の戦いで失点を重ねたことが結果に響いた。失点数はリーグワースト3位の54。結果的に補強ポイントもずれていた。

15年に初めてJ2に降格した。だが、クラブの体質は何も変わっていないどころか、より闇は深くなっているようにも見える。過去にクラブを去っていた監督や選手の言葉が印象に残っている。「このクラブはいつも現場だけが責任を取らされる」。そんな評判はサッカー界に広まっている。

来年は2度目のJ2。J1に戻るだけのサッカーをするなら、戻らなくてもいいとも思う。どんなスタイルで、どんな目標を掲げて戦うのか。3年後、5年後、10年後のビジョンは? 降格決定後、山室晋也社長は声明を発表した。「強い意志のもと変革し、皆様の信頼を取り戻すべく精進いたします」。その言葉を信じたい。【神谷亮磨】