J2では初となる清水エスパルスとジュビロ磐田の「静岡ダービー」は2-2で痛み分けに終わった。アウェーの清水は昨季J1で得点王に輝いたFWチアゴ・サンタナ(30)が今季初ゴールを含む2得点。クラブワースト記録を更新するリーグ戦12試合勝ちなしと停滞感が漂うチームに光明を見いだした。磐田はFW後藤啓介(17)が開始早々に先制点。チームは2度リードした展開を守り切れず、2戦勝ちなしとなった。

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清水は辛くも引き分けに持ち込んだ。サポーターが陣取るスタンドからは拍手とブーイングが入り交じっていた。2度追う状況から追いついて負けなかったが、ほしかったのは勝ち点3。開幕から5試合連続ドローで、リーグ戦は昨季から12戦未勝利とクラブワースト記録を更新した。ゼ・リカルド監督(52)は「非常に悔しい」。シュート数で19-6とライバルを圧倒した一戦でも白星から見放された。

チームは前半2分に警戒していたカウンターから失点。重苦しい雰囲気を一掃したのがエースだった。同42分、中央からのスルーパスに抜け出すと、左足一閃(いっせん)。強烈なシュートをゴール左上に突き刺し、試合を振りだしに戻した。昨季J1得点王の助っ人が今季5試合目で初得点。「いいコースに打てた」と、豪快な1発で得点感覚を取り戻した。

後半にリードを許すも、再びチームを救った。同42分、ゴール前の混戦からこぼれたボールを左足で同点弾。ゴール後はユニホームを脱いで警告を受けたが、「点を取れたことは自信」。フル出場も今季初めてで「90分間出られたことはよかった」とうなずいた。

勝利だけが求められていた一戦でまたしても勝てなかった。それでも、サンタナは「やっていることは間違っていない。1試合でも早く勝てるように続けていく」と気持ちを切り替えた。これ以上の足踏みはできない状況だが、ブラジル人助っ人の復調がチームの光明だった。【神谷亮磨】

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磐田は勝ちきれなかった。2-1の後半42分、同点弾を献上。後半ロスタイムに決勝点を許した前節大宮戦(0●1)同様、試合終盤の失点に泣いた。今季2勝目を逃し、横内昭展監督(55)は「前回もそうですが、勝ち点3を取れなかったことは非常に申し訳なく思っています」。試合後、サポーターからは激しいブーイングが浴びせられた。

若きストライカーの一撃も報われなかった。前半2分。FW後藤が鋭い動きだしでDFの背後を取る。後方からのロングパスに抜け出し、左足で先制点を決めた。「思い切り足を振った。良いところに決まってくれて良かった」。現役高校生の今季3点目を皮切りに2度のリードを奪ったが、守りきれなかった。

開幕から5試合を終え、1勝2分け2敗。スタートダッシュに失敗した。次節はルヴァン杯を挟んで29日にホームで栃木と対戦。この日2点目のネットを揺らしたMF松本昌也(28)は「この勝ち点1を無駄にしないためにも、しっかり準備をしたい」と必死に顔を上げた。【前田和哉】

▼元日本代表監督で磐田でも2度指揮を執ったハンス・オフト氏(75)がトークショーを行った。来日は10年ぶりだといい、「家に戻ってきたような感覚」。抽選で集まったサポーターからの質問にも気さくに応じ、終始和やかなムードで行われた。オフト氏は磐田のJ1昇格を願いながらも、「選手はのびのびとプレーすることが大事。それはエスパルスにも言えること」と両チームを激励した。