23年にベガルタ仙台に加入した宮城県石巻市出身のFW菅原龍之助(23)がプロ2年目を迎えた。

ルーキーイヤーの昨季はリーグ戦6試合2得点。課題が浮き彫りとなった1年だった。悔しい1年目を経て迎えた今季は5日熊本との練習試合で今季初ゴールを挙げるなど、活躍に期待が高まる。11年の東日本大震災を乗り越え、夢をかなえた若きアタッカーが、今季への思いを語り、飛躍を誓った。

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2011年3月11日、大地震と大津波が東日本各地を襲った。当時小学4年生だった菅原は学習塾で大地震に見舞われ学校に避難。生まれ育った故郷が巨大津波にのみ込まれる光景を窓からぼうぜんと眺めていた。3カ月前に建てたばかりの自宅は1階が浸水。2階での生活を余儀なくされた。一瞬でこれまでの日常を奪われ、サッカーどころか、今日を生きるのが精いっぱい。地元・石巻市湊は海沿いにあり、甚大な被害を受け、ライフラインの復旧に時間を要した。復旧後、ようやくボールを蹴ることができた。「久しぶりにサッカーができて楽しかった」。この率直な気持ちがあきらめかけた夢にもう1度明かりをともした。さらに、プロサッカー選手の被災地訪問が菅原の背中を後押し。「いつか自分もこうなりたい」と、再び夢へと向かうきっかけとなった。

大きな困難を乗り越えた菅原は地元で夢をつかんだ。昨年7月16日金沢戦(1●2)でリーグ戦デビュー。だが、安定したプレーができずに萎縮。持ち味を発揮することができなかった。その反省から今季は精神面の成長をテーマに掲げた。「昨季は自信をなくすと自分の良さを見失い、悪いところを見がちになっていた」と振り返り、「不調時でも自分の良さを見失わず、自信を持てるようになりたい」と意気込んだ。

さらに、元日に襲った能登半島地震を受け、あきらめかけた夢をかなえるきっかけとなったプロ選手による被災地訪問を思い出した。「今度は自分がそういう立場になって背中を押してあげたい」。さまざまな思いと覚悟を持って臨む今季、若きアタッカーが仙台だけではなく、日本を明るく照らす。【木村有優】