韓国を引っ張るソン・フンミン(孫興民)は、黒色のフェースガードを外すと、ピッチでうれし涙を流した。

後半ロスタイムに、決勝ゴールをアシストした。勝利が絶対条件の中、土壇場で勝ち越しに成功。3大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を決めると、感情を爆発させた。

韓国メディア「朝鮮日報」電子版によると、ソンは試合後に「選手たちが最後まで諦めずに走った」とチームメートをたたえた。さらに「多くの国民が応援してくれたおかげ」と、サポーターへの感謝を口にした。

21-22年のプレミアリーグ得点王にとって、苦しいW杯だった。

11月1日の欧州チャンピオンズリーグ(CL)で相手選手と空中戦で激突。左目付近を骨折した。

半月ほどでスピード復帰したものの、今大会はフェースガード姿での出場を余儀なくされた。

苦難は続く。

ウルグアイとの第1戦をスコアレスドローで終えると、続くガーナ戦は2-3で敗北。試合終了後には、猛抗議したパウロ・ベント監督にレッドカードが与えられ、第3戦は指揮官不在で臨むことが決まった。

ソンは肩を落とし、悔し涙を流した。

そこから中3日。崖っぷちの状況で臨み、前半5分に先制を許したが、諦めなかった。

同27分に追いつき、1-1で迎えた後半ロスタイム。

思い切って仕掛けた。自陣からペナルティーエリア手前までドリブルで駆け上がり、相手を引き寄せた。隙が生まれる。ゴール前へ走っていたファン・ヒチャンへ的確なスルーパス。ボールはネットに突き刺さった。

16強進出へとつながる決勝弾をアシストし、試合後はうれし涙があふれた。

ソンにとっては、初の決勝トーナメントの舞台となる。

「最大の目標の16強入りを果たせた。ここからはどうなるか誰にも分からない。ベストを尽くすだけです」

暗いトンネルは抜けた。苦しんだエースが、ドラマの続きを描く。