もしあなたがサッカーファンなら、スタジアムで選手にサインやユニホームをねだったことがあるかもしれない。

 試合後のスタジアムでサインをもらえることもなかなかないが、選手が着用したユニホームをゲットできる可能性は限りなくゼロに近い。

 だが絶妙のアイデアで、有名選手のユニホームをゲットした男がいた。

 1月29日にサンティアゴ・ベルナベウで行われたRマドリード-Rソシエダード戦。スペイン南部の都市ベヘル・デ・ラ・フロンテラから観戦にやってきたセルヒオ・サンチェスさんは、スタンドでメッセージの書かれたボードを掲げた。

 それはRマドリードのスペイン代表DFセルヒオラモスに向けたもので「Sergio, si me das tu camiseta te regalo una bandeja de lomo en manteca.(もしユニホームをくれたら、ロモ・エン・マンテカをあげるよ)」と書かれ、サンチェスさんが住む町の名前も記されていた。

 ロモ・エン・マンテカとは豚のラードで焼いた豚ロース肉のこと。ベヘル・デ・ラ・フロンテラの名物で、セルヒオラモスも思わず味見をしてみたくなったのだろう。

 同DFは試合終了後、腹ぺこ状態でスタンドに駆け寄ると、何のためらいもなくユニホームを投げ入れた。そして満面に笑みを浮かべながら「早くよこせ」とばかりに腕を振って、お目当ての豚肉を手に入れた。

 ただのファンサービスではないことはセルヒオラモスの表情が物語っている。米スポーツイラストレイテッド誌(電子版)に映像があるが(http://www.si.com/planet-futbol/2017/02/01/real-madrid-fan-sergio-ramos-shirt-pork#)、同DFは豚肉を受け取ると「グッジョブ」と親指を立て、会心の笑顔で去っていった。

 セルヒオラモスはセビリアのカマスという町の出身。同じアンダルシア州のベヘル・デ・ラ・フロンテラからは車で2時間弱と近く、豚肉料理に郷愁をかきたてられたのかもしれない。いずれにせよサンチェスさんの絶妙の作戦だった。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)