ラルフ・ラングニック暫定監督(63)を迎えたマンチェスター・ユナイテッドの調子がなかなか上がらない。

当然といえば当然なのだが、同暫定監督が求める強度の高いプレス戦術は一朝一夕に浸透するものではない。チームは3日のウルバーハンプトン戦に0-1で敗れ、ラングニック暫定監督の就任後、初黒星を喫した。

ピッチ上だけでなくロッカー室でもチーム内に分断があると、英メディアはこぞって報じるようになった。ラングニック暫定監督の指導を快く思っていない10人以上の選手が退団を希望しているという報道もあった。イングランドでは、クラブ関係者もメディアも結果が出るまで悠長には待ってくれないのだろう。

一方、今季途中からトットナムを率いるアントニオ・コンテ監督(52)の評価はうなぎ上りだ。就任後、ここまでリーグ戦8戦負けなし。ケーンやルーカス・モウラら攻撃の主役たちが生き生きと本来の力を発揮するようになった。

16-17年シーズンにチェルシーをプレミアリーグ優勝に導いたコンテ監督は、昨季まで2シーズン、インテル・ミラノを指揮。昨季はユベントスの連覇を9で止め、インテルに11季ぶりの優勝をもたらした。

インテルを退団したコンテ監督には当然、多くのクラブが熱視線を注いだ。トットナムはシーズンが始まる前に一度、就任オファーを蹴られている。

英デーリー・メール電子版によると、マンチェスターUもスールシャール前監督の後任としてコンテ監督を検討したという。だが細かい部分にまで完璧さを求める同監督の指導スタイルがチームに合わないとクラブ上層部が判断。コンテ監督へのオファーには至らなかったという。

コンテ監督が卓越した指導力を持っているのは間違いないだろう。それと同時に同監督はクラブに対し、移籍市場での積極的な投資を求めることで知られている。インテルを退団したのも選手の補強方針をめぐってクラブと仲たがいしたためだと言われている。

その点、経営的に安定しているマンチェスターUであれば選手補強についてもコンテ監督の要求に応えられたはず。トットナムより早くオファーを出していれば、首を縦に振っていた可能性もある。

結果的にコンテ監督同様に「細かい」ラングニック暫定監督を連れてくるのであれば、コンテ監督にオファーを出していても良かったのでは。デーリーメールの記事を読んで、そう思ってしまった。同暫定監督の善しあしはさておき、マンチェスターUをコンテ監督が率いていたら、今ごろどうなっていただろうかと想像してしまう。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)