バルセロナのジョアン・ラポルタ会長(60)がESPNのインタビューで、アルゼンチン代表FWメッシ(パリ・サンジェルマン)について言及。「彼のバルサでの物語はまだ終わっていない」と、同FWの古巣復帰を希望した。

その上で「物語を修正するのは我々の責任だと思う。まだその可能性はあるし、もっと美しいエンディングであるべきだ」と、メッシにバルセロナで有終の美を飾ってほしいと訴えた。

とはいえ、メッシが昨年夏にバルセロナを去り、パリSGに移籍しなければならなかった原因はバルセロナ自身にある。13億5000万ユーロ(約1890億円)もの負債を抱え、同FWと再契約した上でスペインリーグのサラリーキャップ規定をクリアすることが不可能だったのだ。その結果、メッシの21年にも渡るバルセロナ生活は終止符を打たれることになった。

これについてラポルタ会長はESPNのインタビューの中で「我々が(前会長から)受け継いだものの結果として(メッシの退団を)決断しなければならなかった」と話し、メッシのパリSGへの移籍がバルトメウ前会長のでたらめな経営によるものだと非難した。

それでは21年3月に2度目の就任を果たしたラポルタ会長のもと、クラブは健全経営に向かっているのだろうか。

バルセロナは今夏、MFケシエ、DFクリステンセン、FWラフィーニャ、FWレバンドフスキを獲得。セビリアDFクンデの獲得にも合意したと伝えられている。

レバンドフスキを奪われた形となったバイエルン・ミュンヘンのナーゲルスマン監督は「世界中でバルセロナだけだ。金もないのに欲しい選手をすべて買ってしまうのは」と皮肉った。バルセロナのラフィーニャ獲得について聞かれたイタリアの著名サッカージャーナリスト、ファブリツィオ・ロマーノ氏も「正直言って分からない。サッカー界の人々も分からない。代理人たちも分からない。どうやってバルセロナがその金を捻出しているのか、誰も分からないんだ」と答えている。

バルセロナはすでにテレビ放映権の10%を世界的投資企業「Sixth Street」に売却済みだったが、さらに15%を3億2000万ユーロ(約448億円)で同社に売却したという。これにより、クラブの収支バランスは一時的には好転した。

だが長い目で見た場合、クラブにどのような未来が待ち受けているかは分からない。Sixth Streetは今後25年間、バルセロナの放映権収益の25%を得ることになった。年間にすると4140万ユーロ(約58億円)だ。それはつまりバルセロナは25年もの間、得ることができたはずの58億円を毎年失うということにほかならない。

サッカークラブにとって目先の勝利は何より大事だ。欧州チャンピオンズリーグに出られなければ大きな収入を失うし、有力選手を獲得することも難しくなる。だからこそ法外な移籍金、年俸で選手を集め、チームを強化する。長期的な視点を持たないという意味において、バルトメウ前会長もラポルタ会長もやっていることにそれほど変わりはないように思える。

バルセロナは23日に米ネバダ州ラスベガスで行われたプレシーズンの「クラシコ」で、1-0で宿敵レアル・マドリードに勝利した。さっそく新戦力のラフィーニャが決勝ゴールの活躍を見せた。バルセロナが経営面で何の問題もなく、今季スペインリーグを普通に戦えればいいのだが。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)