今年1月にベルギー1部オイペンに移籍したFW豊川雄太(23)が、主な欧州1部リーグ戦で日本人6人目のハットトリックを達成した。11日の最終節ホーム・ムスクロン戦に途中出場。後半28分から44分までの16分間で、移籍後初ゴールを含む3得点1アシストと神懸かった。自動降格となる最下位16位からの脱出へ4点が必要な中、全4得点に絡み、4-0の勝利で残留に導いた。

 豊川が伝説になった。逆転残留へ4点がノルマの後半12分に起用されると、28分に移籍後初得点となる先制弾。元スペイン代表MFルイス・ガルシアの左FKに頭を振った。4分後にガルシアへの折り返しで初アシストも記録すると「点を取れる気しかしなかった」と勢いが増す。40分に再びガルシアの右CKに頭。44分にはゴール前でDFに猛然と詰め寄り、背後からボールを奪い右足で決めた。

 最下位16位で最終戦を迎え、自動降格寸前だった。豊川の投入前、勝ち点24で並ぶ15位メヘレンは2-0で勝っていた。試合前の得失点差はマイナス1。それを同3に広げられ、ひっくり返すには4点が必要だった。残り約30分。絶望的な状況下、元フランス代表MFのマケレレ監督から「とにかく点を取れ」と英語で送り出されると、わずか16分間で3得点1アシスト。奇跡の残留に導き、ピッチになだれ込んだサポーターから胴上げで祝福された。

 試合後の街。すれ違う人から「レジェンド」と最敬礼された。「怖いくらいの結果に自分でもビックリだけど、得点より残留の方がうれしい。ファンの笑顔、スタッフのホッとした顔が見られて良かった」。昨季まで岡山でプレー。J2から異例の欧州1部移籍は将来を期待されたもので、まだ途中出場4戦目の若手。それでも練習一番乗り、通訳なしでも臆さぬ姿勢をマケレレ監督は起用理由に挙げ「ユウタのメンタルは完璧」と救世主に感謝した。

 主な欧州1部リーグ戦でハットトリックを遂げた日本人は豊川が6人目(7度目)。ほかはすべてA代表経験者だ。今夏のW杯ロシア大会は「無理でしょ」と笑い飛ばしたが、途中出場での1試合3発は日本勢初。16年のリオ五輪代表候補が将来の飛躍を予感させるインパクトを欧州で残した。【木下淳】

 ◆豊川雄太(とよかわ・ゆうた)1994年(平6)9月9日、熊本市生まれ。大津高から13年、同期の植田直通と鹿島入り。翌14年に内田篤人以来6年ぶりとなる10代での開幕スタメン。U-19~23日本代表。16年1月のリオ五輪アジア最終予選、負ければ敗退の準々決勝イラン戦でも決勝点を挙げた。J1通算23試合2得点、J2通算73試合18得点。今年1月にオイペンへ完全移籍。家族は両親と兄、弟。利き足は右。173センチ、62キロ。血液型B。