【イーストラザフォード(米ニュージャージー州)27日(日本時間28日)=岡崎悠利】レアル・マドリードの日本代表FW久保建英(18)がトップチームでの北米ツアーを終えた。

インターナショナル・チャンピオンズカップでは3試合中2試合に出場し、26日のアトレチコ・マドリード戦では鋭いミドルシュートで見せ場を作り、得点の起点になった。久保自身もこだわりを持つシュート。若い日本代表GK2人の視点から、レアルで生き抜くための武器、その“すごさ”に迫る。

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18歳が放つシュートは、日本人選手の中でも異質であることが見えてきた。6月に日本代表で南米選手権(ブラジル)をともに戦った大迫敬介(20=広島)と小島亨介(22=大分)。練習で対峙(たいじ)したGK2人が、技術の一端を明かした。シュートを打つ前から違いがあるという。2人は「ボールの置きどころ。ニアサイド、ファーサイドのどちらにも打てるところに置いている」と口をそろえた。コースが予測できないため、対応が遅れるという。

小島は「細かいステップから、いきなり打ってくることもある」と説明する。コースとタイミングを相手に限定させないことで、打つ前からGKに対してアドバンテージを取ることができる。Aマドリード戦のシュートもこれに近いもの。ゴールまで距離があったため止められたが、一部で世界最高GKとの呼び声もある名手オブラクもはじくのが精いっぱいという弾丸ミドル。あれも、得意のシュートパターンだった。

蹴り方にも工夫がある。ボールに対する足の合わせ方だ。大迫は「ファーに打つ動作で、当て方を変えてニアに打ってきたりする」と証言する。小島も「GKを見ながら変えている」と、ここでも同じ印象を語る。シュートを打つぎりぎりまで相手GKの動きを見ながらコースを変えても、ボールをしっかり捉えることができる高い技術。久保自身も「練習して、レパートリーは持っているつもり」と話している。

さらに、小島は驚きを持って話す。「シュートの軌道が1人だけ違う。外国人選手のよう」。確かに見ていても伝わってくる。多くの日本人選手のシュートは、横回転のカーブで巻きながら向かっていくことが多い。一方、久保のシュートは高速でドライブ回転が加わり、斜めに落ちながら、まっすぐゴールを捉える。そんな弾道が多い。大迫はこうも言う。「普通、カーブをかけたらある程度スピードが落ちるけど、彼は落ちないから(反応するため)ステップを踏む時間がない。遠くに跳ぶために半歩でも踏みたいところだけど、その時間がない。だからコースに跳んでも届かない」。

久保は173センチ、67キロ。小柄な部類だ。ただ、シュートの威力はその体格に似つかわしくないと小島は明かす。「そんなに強く蹴っていなくても、止めるとすごく重い」。決して大きいとはいえない体を存分に使い、技術を一瞬の動作の中に凝縮させる。久保は基本的に、自らのスキルについて語らない。その手の質問には「ライバルが増えたら困るので」「秘密です」と、周囲を笑わせ、かわす。ただ、実際にシュートに対峙(たいじ)するGKは、ギッシリ詰まった技術を感じていた。笑ってかわすことはできそうにない。こんな武器で、超名門の厳しい生存競争を生き抜く。