U-23タイ代表を率いる西野朗監督(64)を直撃した。5日、バンコク近郊でU-23アジア選手権(8日開幕、タイ)の公式練習初日を終えた西野監督が日本メディアの取材に対応。勝ち上がれば日本との対戦も考えられるU-23タイ代表の現在地を、冷静に分析した。

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タイA代表とU-23代表監督の兼任が発表されて約半年。スーツが似合う西野監督だが、代表チームのジャージ姿はすっかり板についていた。

9月からの3カ月はA代表のワールドカップ(W杯)予選があったため、U-23世代の指揮を執り始めたのは、ここ1カ月半くらいだという。

西野氏 国の目標は26年のW杯出場。そういう意味では、今大会で自分たちの立ち位置が分かると思う。

6年後のW杯で中核を担うはずのU-23代表だが、西野監督は「対外試合、強化の試合が足りていない。国内キャンプをして、国内クラブと試合をしたくらい。海外遠征に出ていることもないし、十分ではない」と話す。事実、西野監督就任以前の昨年3月に行われた今大会の予選では敗退しており、開催国として出場できている状況だ。

西野監督にとっての初陣となった東南アジア版五輪「Seaゲームス」(昨年11月~12月)も、まさかのグループリーグ敗退。3連覇中だったU-23タイ代表にとっては、厳しい結果が続いている。

西野監督は言う。「選手たちはそこまでの自信が持てていないと思う。国内でレギュラーで、なんとかポジションを取りたい、というのが最大の目標のように感じる」。タイの英雄、北海道コンサドーレ札幌MFチャナティップのように、外へ外へと挑んでいく姿勢は、今のU-23世代には不足しているようだ。「厳しく言うと反発してこない」と、指導の難しさも感じているようだ。

その上で、選手のチャレンジに対する意欲を生み出すのは、指導者の仕事だと考えている。

西野氏 サッカーの技術、戦術的なところというより、メンタリティー。国民性もあるけど、まだまだ厳しさが足りない感じ。それを気づかせてあげたい。チャレンジするステージに対するアプローチは強くかけていきたい。

今大会では、1次リーグを通過すれば決勝トーナメント初戦で日本と対戦する可能性もあるが、西野監督はタイ代表のレベルをふまえた上で「全く視野に入りません。この大会は3試合に対するチャレンジしか考えていない」と話した。冷静に、客観的に。異国の地で、西野監督の挑戦は続いていく。