お笑い芸人ディエゴ・加藤・マラドーナ(40)が、26日、元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナさんの訃報を受けて止まらないマラドーナ愛を語った。

加藤は、マラドーナさんにあこがれ、マラドーナさんのメーク、カーリーヘアのカツラを身につけて、全国でサッカー教室などを行っている。

会いたい気持ちが強くなり、思い切って海を渡ったのは昨年4月上旬。メキシコ2部ドラドス・デ・シナロアの監督を務めているマラドーナさんに会いに行った。関係者のつてをたどりアポも取ったが、実際に会えるかは半信半疑だった。

その時は突然やってきた。アポの前日、リーグ戦を翌日に控え非公開練習の見学許可を得た。スタンドで見ていると「今からいいぞ」と急に呼ばれた。あたふたするのをよそに、マラドーナさんは「僕と君は、言葉は通じないけどアイコンタクトで通じ合っていたんだよな」と笑顔で話しかけてくれた。

加藤は「ずっと目を見て、笑顔で話しかけてくれました。こっちが緊張しているのを察してか、ハグや握手を繰り返ししてくれて、ずっと肩に手を置いてくれていたんです」。感動で涙があふれた。

マラドーナさんのものまねをしていることを伝えると、公認してくれた。その後はパス交換にリフティング。帝京-順大とサッカー部だった加藤にとって「感動とかとは違う領域でした」と夢心地だった。

翌日の試合は、1-1で引き分け。プレーオフ進出をかけた一戦で勝てず、マラドーナさんは会見で辞任を示唆。会見場の雰囲気は一気に重くなった。

ただ会見後、部屋から出る時にマラドーナさんから「加藤!」と名前を呼ばれた。直立不動の加藤にマラドーナさんは近寄り「これからも君の活躍を楽しみにしているよ」と伝えた。地元の記者はあっけに取られ、ドキュメント映像を密着撮影していた番組スタッフもその様子を撮影し始めた。

加藤は日本国内だけでなく、海外でもマラドーナさんのメークと身なりでイベントを行う。マラドーナさんと同じく小柄、同じ左利き、高校と大学で鍛え上がられた丸太のような太もも、スパイクもプーマの黒に、ひもも本家と同様に足首を1周してから結ぶ。

マラドーナさんに最後に会った日本人かもしれない。「マラドーナは世界のどこに行ってもみんな知っているんです。モスクワでもグアムでも、『神の手』をやればうけます。偉大さをこれからも伝えていきたいですね」。

プロサッカー選手になるという夢はかなえられなかったが、マラドーナに会うという夢はかなえた。これからも、マラドーナ愛を胸に生きていく。【高橋悟史】

◆ディエゴ・加藤・マラドーナ 1980年(昭55)10月31日、横浜市生まれ。本家ディエゴ・マラドーナの誕生日(10月30日)とは1日違い。小学1年生でサッカーをはじめ、6年生で横浜市選抜入り。中学時代は横浜マリノスのジュニアユースにも所属。東京・帝京高では背番号10を背負い、順大へ進学。卒業後、お笑い芸人の姿にカッコよさを覚えて脱サラ。19年4月にメキシコでマラドーナ氏と対面した。164センチ、73キロ、太もも周り63センチ。