デンマークのMFクリスティアン・エリクセン(29=インテル・ミラノ)が12日、試合中に突然倒れ、欧州選手権1次リーグB組のデンマーク-フィンランド戦は一時中断の末、再開され1-0でフィンランドが勝ち、初勝利をつかんだ。

エリクセンは会場に近いコペンハーゲン市内の病院に運ばれた。現在は意識も戻り、容体は安定しているという。

フィンランドにとっては歴史的1勝だが、この試合にかかわった全員がエリクセンを第一に思い、素晴らしい働きをしたといってもいい展開だった。

エリクセンが突然ピッチに倒れると、最初にアンソニー・テイラー主審(英国)が駆け寄る。異変に気づいた両チームの選手たちが、メディカルスタッフを大声で呼んだ。

その間、駆けつけたデンマークのDFヨアキム・メーレ(アタランタ)とDFシモン・ケアー(ACミラン)が突っ伏したままのエリクセンを、すぐ横向きにし、機敏に対応。

イタリア紙ガゼッタ・デロ・スポルトによると「仲間の口を開き、舌の位置を確認し、横向きにした」と気道確保を行ったという。

医療のプロが駆け寄ると、今度はGKキャスパー・シュマイケル(レスター)が選手に離れるよう指示。専門家の措置を優先させた。

処置の間は、この様子を、デンマークの選手たちが取り囲んで人垣で隠し、プライバシーを守った。

緊急事態にピッチまで降りてきたエリクセンの妻サブリナさんを、ケアーとシュマイケルが抱き留めて、フォロー。

ガゼッタ・デロ・スポルトによると、インテルとミラン、同じミラノで暮らすエリクセンとケアーは家族ぐるみの付き合いだという。

担架に乗せられたエリクセンは、フィンランドサポーターが渡したとみられる、フィンランド国旗でガードされるようにしていた。

中断中、誰もいないピッチに向け、スタジアムの両チームのサポーターが呼応するように、「クリスティアン」「エリクセン」と声を合わせてエールを送った。

直後の試合では、インテルの同僚のベルギーFWロメロ・ルカクが、ロシア戦でのゴール後にカメラに向かい「クリス、クリス! 強くいてくれ。愛してるよ」と叫んだ。

デンマークの至宝に対し、所属のインテルは「フォルツア クリス」と、かつて所属したトットナムも「全てのスパーズファミリーが君とともにいる」などとツイート。

同じ欧州選手権に出場しているドイツ代表は「エリクセン、我々はあなたとともにある」と、エリクセンの姿が映った大画面の前で、レーウ監督ら、代表チーム全員の集合写真を撮ってアップした。

欧州の多くのクラブが、エリクセンへのメッセージを発するなど、サッカー界は、エリクセンとともにある。