名門バルセロナが、クラブのレジェンド、神戸MFアンドレス・イニエスタ(39)のために「中0日」「日本滞在24時間」の超強行軍を敢行した。今回の親善試合は、7日に予定されていた神戸の天皇杯2回戦を変更するなど、日本サッカー協会(JFA)やJリーグも巻き込み「特例中の特例」として実施された。

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今季スペインリーグを制したバルセロナは、クラブのレジェンド、イニエスタのために超強行日程を敢行した。

日本時間5日午前4時キックオフのリーグ最終節セルタ戦を終えてから、37時間30分後に神戸戦のキックオフ。アウェーでの最終節後、リーグ優勝の余韻に浸ることなく、日本行きの飛行機に飛び乗った。約15時間のフライトを終えて羽田空港に到着したのは、6日午前0時過ぎだった。

午前1時半に都内のホテルに移動。わずかな隙間時間に新宿・歌舞伎町や渋谷・スクランブル交差点に繰り出すメンバーもいた。そして夕方には試合会場の国立競技場入り。午後7時30分スタートの試合では大歓声を受けて2-0と勝利。すると再び何事もなかったように羽田空港へと移動。日付の変わった深夜の便でスペインへの帰途に就いた。

滞在時間はわずか24時間という耳を疑うようなスケジュール。公開練習やファンイベントもなく、まさにイニエスタのためだけの来日だ。チーム全体の市場価値が1000億円超ともいわれるスター軍団が動いた裏には「バルサは今も彼に対して、それだけの敬意がある」と関係者は言う。

日本サッカー界にとっても功労者でもあるイニエスタは、JFAも動かした。神戸は当初、7日に長野との天皇杯2回戦が組まれていたが、14日に変更。Jリーグや、相手クラブら各所が融通を利かせた。調整の際には、協会側から「この変更は前例に残さない。特例中の特例」との言及があったという。

この日、試合前のメンバー紹介で世界最高峰のスターたちを押しのけて、ひときわ大きな声援を浴びていたのがイニエスタだった。「永遠の別れではない」と語る通り、絆は固い。両クラブのレジェンドとして、その功績はいつまでも輝き続ける。【佐藤成】