イラン代表チームのFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会の不参加が現実味を帯びてきた。

イランのドンヤマリ・スポーツ・青年相は11日、「いかなる状況でもW杯に参加することはできない」と国営放送で述べた。イランは2月末からW杯開催国の米国などによる攻撃を受け、最高指導者だったハメネイ師が死亡。大会不参加への懸念が高まっている。

ドンヤマリ氏の発言に先立ち、国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長はトランプ米大統領と会談したことを自身のインスタグラムで明らかにし「トランプ大統領は議論の中で、もちろんイランチームの大会参加を歓迎すると改めて表明した」と投稿。トランプ大統領は12日、参加は歓迎されるとしつつ「彼らの命と安全のために適切ではない」と自身のSNSに投稿した。

米国、カナダ、メキシコで共催されるW杯は6月11日(日本時間12日)に開幕。1次リーグG組のイランはいずれも米国内で試合が組まれ、ベルギー、エジプト、ニュージーランドと対戦する予定となっている。

前回の2022年カタール大会でもイラン代表チームは政治的問題に巻き込まれた。

初戦のイングランド戦(2-6)。選手は試合前に国歌を斉唱しなかった。イラン国内で広がる反スカーフデモに連帯を示したとみられ、イラン国営放送は選手が国歌を歌わなかった場面でテレビ中継を一時中断した。イスラム体制下のイランでは髪を隠すスカーフのかぶり方が不適切だとして当局に拘束されたマフサ・アミニさんが急死。これに抗議するデモが続き、当局が厳しく弾圧していた。

第2戦のウェールズ戦(2-0)では一転、選手は国歌を歌った。米CNNテレビは、抗議を弾圧する革命防衛隊が家族へ危害を加えると選手を脅迫していたと伝えた。選手は「圧力はない」と否定したが、チームが勝利したこともあってか、デモを弾圧する保守強硬派に近いイランのメディアは「熱意がない」と批判したことを謝罪し、「代表チームに感謝する」とした。

1次リーグ突破を懸けた最終の米国戦(0-1)は強い政治色が注目された試合となった。イラン代表選手は国歌を歌ったものの、今度はデモを支持する一部のイランサポーターからブーイングが起こった。

だが、両チームの選手は試合前にハイタッチをかわし、試合が始まると目立ったラフプレーもなかった。イランは競り負けて1次リーグ敗退となったが、ピッチ上に「敵意」はなく、ポルトガル人のケイロス監督は「懸命に戦ってくれた選手を誇りに思う」と語った。

◆女子アジア杯でも 現在、オーストラリアで開催中の女子アジア・カップでも同じような問題が起こった。イラン代表チームの選手が国歌を歌わず、母国の体制への抗議と受け取られ、イラン国営メディアなどが「裏切り者」と批判。迫害を恐れて亡命を求めた選手とチーム関係者の計6人に対し、オーストラリア政府は人道ビザ(査証)を発行することを決めた。