中国スーパーリーグ(SL)杭州緑城の岡田武史監督(55)が、ホーム開催の11日のリーグ開幕青島中能戦で、遠く中国から東日本大震災の被災地へメッセージを送る。2月29日、チームに合流するために成田空港発の航空機でコーチ陣らと杭州入り。東日本大震災発生から1年となる11日に行われる開幕戦で、メッセージを記した横断幕の掲示と黙とうを行う計画を明かした。既に中国SLを運営する中国協会の許可も得た。岡ちゃんの被災地を思う心は海を越える。

 被災地への思いが頭から離れることはなかった。岡田監督は成田空港で「いみじくも開幕戦が3月11日になった。これも何かの縁だと思うから、やるべきことはある。ウチも試合前に黙とうし、メッセージを込めた横断幕を出すことになった」と強い口調で話した。

 当初、開幕戦は10日に予定されていたが、2月に入り11日へのスライドが決定した。その時点でクラブを通し、中国SLを運営する中国協会に黙とうや横断幕の掲示の了解を得るための交渉を開始。「日本合宿中に中国協会の了解が出た」と明かした。

 東日本大震災後、被災地を回りサッカー教室を数多く実施。昨年8月には仙台で日本代表ザッケローニ監督との「新旧代表監督コラボ」で子供たちへの指導を行った。被災地の厳しい状況を目にしているからこそ「中国からではできることも限られるかもしれない」と慎重に話す。

 それでも、動かずにはいられなかった。中国では横断幕の内容にも厳しい監視が入るため、許可を得るのは簡単ではない。ただ、岡田監督や杭州緑城の熱意が中国協会の理解を生んだ。「まだ(横断幕の)文言は決めていない」と言うが中国語、日本語でメッセージが書かれる予定。

 「我々が中国で頑張って結果を出すことで、少しでも力になれるかもしれない」という言葉を実現するためにも、開幕勝利は必要不可欠。元川崎FのFWレナチーニョ、前浦和FWマゾーラらブラジル人が故障から復帰。移籍のうわさがあった中国代表DF杜威も残留、開幕ダッシュを飾る戦力が整ってきた。

 「復興の道のりはまだこれからだと思う。中国から何か励みになることができれば」。今季の目標の中国SL優勝を達成することが一番のメッセージになるはずだ。【菅家大輔】

 ◆中国スーパーリーグ

 94年に中国サッカー協会が国内の競技レベル向上を目指して設立。03年までは1部15クラブ、2部12クラブで構成されていたが、04年から1部12クラブ、2部15クラブに変更。1部を中国スーパーリーグとした。その後、スーパーリーグのクラブ数は05年に14、06年以降は16。リーグ戦はホーム&アウェーの2回戦総当たりで実施され、最多優勝は大連実徳の8回。昨季は「昇格組」の広州恒大が初優勝を飾った。