【北京=益田一弘】男子やり投げの新井涼平(24=スズキ浜松AC)が、全体の2位で決勝に進出した。予選の3投目に今季自己最高の84メートル66を投げて、決勝に自動進出する83メートル00をクリア。明日26日の決勝で日本記録87メートル60(89年溝口和洋)の更新とメダルに照準を合わせ、「反対側のスタンドまでやりを届ける」と豪快に言った。8位入賞すれば、来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定する。

 一発回答スローだ。新井は「鳥の巣」の観客に手拍子を要求した。速い助走から、低い弾道のやりを投げ込む。北京の夜空を切り裂いて84メートル66。わき上がる観客に右腕でガッツポーズ。1投目は79メートル50、2投目は81メートル28。投げるたびに修正してきっちり決めた。「83メートルを超えることは確信していた。まだまだいける」。

 新井の投てきは、低い軌跡が特長。この日は風がなく「高く投げると伸びずに落ちる。高く投げたら終わりだなと思った」。おあつらえ向きの条件で右腕を振った。「3投目は少し手が離れて、やりが抜けていた。それでもいけたから決勝は日本記録も見える。そこまで投げれば、メダルも見えてくる。そこを見据えてやりたい」と宣言した。

 高1の夏にやり投げを始めた。基本しか知らず、1人で投げ続けた。高3の春には我流のフォームで脇腹の骨が曲がるけがをした。国士舘大入学時は体重70キロ弱。フォームも修正するところだらけだった。「大学を卒業したら、実家の運送業を手伝おうと思った。レベル的に続けられないと思っていた」。それでも大学2年の11年に日本選手権4位。昨春から社会人になってさらに成長。自己記録の86メートル83は日本歴代2位だ。

 苦戦が続く日本勢で予選から始まる種目では初の決勝進出者になった。第一人者の村上、12年ロンドン五輪代表ディーンがおらず、ただ1人の出場。それでも臆するところはない。「決勝に向けて、修正できるところがいっぱいある。まだまだ上げられる。不安はない。決勝では全力で反対側のスタンドにやりを届けるだけです!」。まさかの「鳥の巣横断スロー」をぶち上げて豪快に笑った。

 ◆新井涼平(あらい・りょうへい)1991年(平3)6月23日、埼玉県生まれ。皆野高1年でやり投げを始めて、国士舘大を経て、昨年4月からスズキ浜松AC。昨秋の仁川アジア大会銀メダル。自己ベストは86メートル83。183センチ、92キロ。