【北京=益田一弘】女子マラソンの前田彩里(23=ダイハツ)が、救世主になる。最終日の明日30日に号砲を迎える3選手が北京市内で会見。日本は入賞0の危機にあるが、前田は「入賞してリオ切符をとる」。07年大阪大会ではメダルなしの最終日に同種目の土佐礼子が銅を獲得。前田にも期待がかかる。

 23歳の新ヒロインが、日本を救う。前田は「目標は入賞して、リオの切符をとること。ここで決めるのが一番近い」。日本人トップの入賞者は来年リオ五輪が内定する。13年8月に亡くなった父節夫さん(享年54)が残した最後の言葉が「五輪に行け」だった。天国の父との約束を果たす快走が、日本のピンチを救う。

 日本は第7日まで入賞0。このまま終われば、第1回の83年ヘルシンキ大会以来32年ぶりの屈辱。男子20キロ競歩など期待の種目で結果が出ていない。日本陸連の酒井強化副委員長も「苦しい戦いだが、メダルを期待している」。日本歴代8位の2時間22分48秒を持つ前田が、その筆頭候補だ。

 大阪の再現が期待される。地元開催の07年大阪大会はメダル0のピンチを土佐礼子が3位で救った。当時15歳だった前田は「見てないんです」と話すが、状況は似ている。指導する林監督は「前田の走りをすれば入賞に近いし、それ以上の結果が出る」とし、目標はワンランク上のメダルだ。

 3度目のマラソンで夏は初めて。暑さ対策を聞かれて「あまり何も考えてないです。フフフ」と笑う。試合ではPM2・5などの対策で、ラッキーカラーのピンクを入れた特注サングラスをかける予定。初の世界舞台で、レースプランはすでに決まっている。「後半に(相手が)ペースアップしたらきついかなと思う。だったら自分のペースでやった方がいい」。臆せずに先頭に立って、積極的にレースを動かす考えだ。