リオ五輪1万メートル代表で、マラソン初挑戦の関根花観(はなみ、22=日本郵政グループ)が2時間23分7秒で日本勢最高の3位となった。日本歴代13位、初マラソンに限れば4位となる好記録で、20年東京オリンピック(五輪)の代表選考会グランドチャンピオンシップ(19年秋以降、GC)の出場権を獲得。1月の大阪国際で日本歴代9位を出した松田瑞生(22)に続き、女子マラソン界に楽しみな若手が現れた。

 ハーフマラソンの経験すらない。距離への不安は、関根には関係なかった。日本勢で唯一、25キロすぎまで先頭集団で粘る。その後、ギアを上げたアフリカ勢2人に取り残されたが、最後まで変わらないペースを刻んだ。中間点~ゴールまでの1時間11分35秒は、スタート~中間点に比べて3秒遅れただけ。タイムを確認したのは最後の直線で「無我夢中でした。GCは絶対取りたいと思っていた」と笑顔を見せた。

 14年の入社1年目からマラソン挑戦を志願していた。練習拠点の東京・国分寺市から同・町田市の自宅まで往復約40キロを100円玉だけ持って走ることもある。実戦経験はなくても、準備はできていた。

 秋は不調だった。昨夏の世界選手権出場を逃し、気持ちが空回り。昨年10月の米国合宿では全体練習から外され、涙した。宿舎へ戻る車の中で、温厚な高橋監督から「前を向け」と一喝された。入社以来、怒られたのは初めてだった。12月にはマラソン初挑戦も決まり、気持ちは吹っ切れた。

 7年前の3月11日。自身は都内にいたが、1カ月後に仙台育英高へ進学が控えていた。後日、住民票を移しに宮城・多賀城市役所へ行くと、転出者の長蛇の列を見た。教室はプレハブ。家族を亡くしたクラスメートもいた。練習環境などから2年時に愛知・豊川高へ転校したが、映像でしか知らなかった震災の現実を肌で感じる1年を過ごした。「あの経験は今の自分につながるものがあるのかな」。今、普通に走れる環境は当たり前でないと思う。

 8月のアジア大会は回避する。今後は海外の高速レースに出場し、ペースの切り替えの対応力を磨く。高橋監督は「まだ7割の出来」と言う。底知れぬ可能性を秘めている。【上田悠太】

 ◆グランドチャンピオンシップ(GC) 19年9月以降に開催予定の東京五輪マラソン代表選考会の名称。GCで男女各2人の代表を選ぶ。17年夏から19年春までに行われる国内指定大会「GCシリーズ」で、日本陸連が各大会に定めた順位とタイムの条件を満たした選手は、GC出場権を獲得する。女子の順位と条件は以下の通り。

 大阪国際、名古屋は日本人3位以内の2時間28分以内、同6位以内の2時間27分以内。さいたま国際は同3位以内の2時間29分以内、同6位以内の2時間28分以内、北海道は同1位の2時間32分以内、6位以内の2時間30分以内。また17年8月1日から19年4月30日までの期間中に、国際陸連が記録を公認する競技会で基準の成績を残せば、ワイルドカードでGCとなる。