やはりこの男は強かった。9位だった昨夏の世界選手権で日本代表からの引退を表明した男子マラソン川内優輝(31=埼玉県庁)が現地時間16日、世界最高峰シリーズ「ワールド・マラソン・メジャーズ」の1つ、ボストンマラソンで2時間15分58秒で優勝した。40キロすぎに逆転し、日本勢では1987年大会の瀬古利彦以来31年ぶり覇者となった。

 冷たい雨が降り注ぐコンディションだった。渡米前の羽田空港で、前半は「目立たないように」と集団に潜むプランを描いていた。しかし、宣言とは違い、スタートからダッシュで飛び出す、大逃げ策を敢行。中間点を先頭集団の中で1時間5分59秒で通過し、その後も持ち味の粘りを発揮した。前回大会は大迫傑(26=ナイキ・オレゴンプロジェクト)が日本人30年ぶりの表彰台となる3位に入っており、日本勢は2年連続の表彰台となった。

 出場の経緯は意外な縁だった。代理人であるラーナー・ブレッド氏が昨夏、大学の先輩に当たる同マラソン3連覇のビル・ロジャース氏(米国)と野球の米大リーグのレッドソックス-マーリンズ戦を観戦。その時、ロジャース氏が川内へ向けて、ボストンマラソンの出場のラブコールをした。その動画をブレッド氏からもらった川内は「偉大な選手から呼んでいただけるのはうれしいこと」と30分以内に出場する意向を伝えたという。昨年末にはコースを試走。122回の世界的にも伝統あるレースでサプライズを起こした。

 ただボストンは国際陸連が求める条件を満たしていない片道コースのため、公認記録とはならない。