好記録が続出したダイヤモンドリーグ・パリ大会(6月30日)から5日後の大会。男子400メートル障害のアブデルラーマン・サンバ(22=カタール)と女子400メートルのサルワ・エイド・ナセル(20=バーレーン)は、アジア新を出したレースの次戦として注目される。また、男子200メートルには“ポスト・ボルト候補”が登場する。

 サンバがパリ大会で出した46秒98は世界歴代2位というハイレベルの記録だった。男子400メートル障害の世界記録は1992年バルセロナ五輪でケビン・ヤング(米国)が出した46秒78。サンバは「やるべきことをワンステップずつやっていくだけ。(世界記録は)わからない」と慎重だ。

 サンバのパリ大会以前の自己記録は6月10日にマークした47秒41で、昨年までは48秒31の選手だった。勢いに乗って記録を出すことよりも、足元を固めることを重視するのは当然だろう。

 だがローザンヌ大会は、記録が出やすい硬めのトラックで行われ、パリ大会で競り合ったキーロン・マクマスター(21=英国領バージン諸島)とカルステン・ワルホルム(22=ノルウェー)も出場する。26年ぶりの世界記録更新の可能性もゼロではない。

 女子400メートルのナセルの方が、アジア記録更新の可能性は高い。

 昨年すでに49秒88と、前アジア記録の49秒81に迫っていた。今季は50秒51・49秒98・49秒84と確実に記録を上げ、パリ大会で49秒55のアジア記録保持者になった。

 今季出場したダイヤモンドリーグ4大会で4連勝中だが、ローザンヌには全米選手権優勝のシャキマ・ウィンブレイ(23=米国)が参戦する。オスロ大会ではナセルが0秒55差で勝ったが、ウィンブレイは全米選手権優勝時に49秒52と自己記録を0秒66更新した。

 今年大きく伸びたウィンブレイと、少しずつ伸びているナセル。対照的な2人の対決で49秒台前半の優勝記録が期待できる。

 男子200メートルでは“ポスト・ボルト候補”選手たちが対決する。注目度が高いのはノア・ライルズ(20=米国)とマイケル・ノーマン(20=米国)の2人だ。

 ライルズは100メートルの全米選手権優勝者で、9秒88の今季世界最高タイをマークした。200メートルの自己記録も19秒69の今季世界最高タイで、ダイヤモンドリーグでは2勝している。ローザンヌでも優勝候補筆頭だろう。

 ノーマンは日本人の母親を持ち(1988・89年に100メートル中学記録を出した斉藤伸江さん)、本職の400メートルで43秒61の今季世界最高を全米学生優勝時に出している。パリ大会200メートルに19秒84の今季世界4位記録で優勝したが、ダイヤモンドリーグポイント対象外だったためライバル不在だった。

 自己記録は19秒97だが、昨年の世界陸上銅メダルのジェリーム・リチャーズ(24=トリニダード・トバゴ)が2人に割って入る可能性がある。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。