男女とも上位2人が20年東京オリンピック(五輪)の代表に内定する「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」が15日、明治神宮外苑発着で行われる。青学大・原晋監督(52)は14日、取材に応じ、大学時代に箱根駅伝を1度も走ったことのない橋本峻(25=GMO)について「五輪代表になる可能性は十分ある」と潜在能力の高さを強調した。

青学大出身の出場者は3人。元エース一色恭志は欠場も「山の神」神野大地、初優勝時の主将だった藤川拓也と実績あるメンバーが出る。原監督は教え子全員に同じ期待を抱くが、中でも面白い存在が橋本だという。「無名ランナーの人生逆転劇は最高のドラマ」と、橋本の暗黒の学生時代を思い浮かべながら言った。

「とにかく走ることが好き。『走っとけ』と言ったらずっと走っているタイプ」(原監督)。1年生から駅伝メンバー入りする勢いだったが、ケガに泣く。長距離ランナーに起こる足が抜けるような奇病にもかかった。何とかケガを乗り越え、3、4年時は山登り5区候補になった。だが、3年時は同期で、その後「山の神」と呼ばれる快走をした神野の付き添い、4年時は本番1週間前まで走る予定だったが、ケガから急回復した神野に、その座を譲った。

ここに16年1月、2連覇を飾った表彰式の写真がある。原監督の右隣に連覇の原動力となった神野、その神野と原監督のちょうど後ろに、とうとう4年間、箱根を走れなかった橋本がいる。表面上は笑顔を保ったが、心は泣いていた。その日の祝勝会後、マネジャーに言った。「すごく悔しい。実業団で絶対に頑張る」とリベンジを誓った。

言葉にうそはなかった。社会人1年目、16年12月の防府マラソンで優勝。今年2月には青学大出身としては一番乗りでMGC出場権を獲得した。原監督は「調整は順調そう。電話したら『ワクワクしてます』と言っていた」と話す。暑さに強く、山登り5区の補欠だっただけに上りにも強い。そして箱根を走れなかった大学時代の逆境に耐えたメンタルの強さもある。ペースメーカー不在で代表争いの夏のマラソン。速さより強さが求められる。原監督は「後半もつれて、35キロ過ぎから上り勝負になれば、あっと驚かせる可能性もある」と続けた。

大迫、設楽、井上の3強は頭抜けているとはいえ、無名ランナーの一発逆転の楽しみもできた。原監督は「今までの選考は不透明な部分もあったが、MGCで透明性と公平性が確保できた。平等にチャンスができたことは、陸上界にとって大きなプラス」と、教え子たちの奮闘を願うように言った。【田口潤】