30キロから日本記録、そして世界との壁だった。藤本拓(30=トヨタ自動車)は日本記録を狙えるハイペースに食らいついた。しかし、30キロを過ぎて一騎打ちだった2時間5分26秒の自己記録を持ち、モロッコ代表に決まっているエルマハジューブ・ダザ(28)に引き離され、ペースも急落した。日本人最高の2位も、タイムは2時間9分36秒だった。

「悔しい思いは正直、ありますが、途中までいいチャレンジをさせていただいた」。そう、やり切った表情だった。

東京五輪の代表に逆転で入るには日本記録を上回る2時間5分49秒以内が必要だった。先頭集団を先導する30キロまでのペースメーカーの設定タイムは、1キロあたり2分58秒と、それを狙える基準だった。そのハイペースを、28キロ付近までは「35キロまで維持できる感覚はあった」という。30キロの通過は1時間29分33秒。しかし、30キロを越えると一気に足が重くなった。30キロから35キロまでの5キロは15分39秒、35キロから40キロまでの5キロは16分35秒を費やした。

ただ、15キロ地点では気温が21度に達するなど、条件は決してよくなかった。他選手との接触もあった。その中で日本人で唯一、30キロまで先頭で走った。手応えもある。自己記録は2時間7分57秒。日本記録との距離感を問われ、「練習を積み、コンディション、ライバルなどの条件がはまれば、不可能ではないと思う」と言った。まだマラソンは4度目。30歳だが、伸びしろはある。

まだ来年3月の東京、びわ湖毎日と東京五輪の代表になる道は残るが、佐藤監督は出場に否定的な考えを示す。今後の将来も考慮し、「ハーフぐらいで作り直す方がいいのではないか。東京、びわ湖はちょっときついかな。ストップさせるのも仕事」と語った。

日本人2位(全体3位)は2時間10分33秒の福田穣(28=西鉄)、日本人3位(全体5位)には箱根駅伝10区でコースを間違えながら、驚異の巻き返しでシード権を死守したことでも知られる寺田夏生(28=JR東日本)が2時間10分55秒が入った。