3区8位でたすきを受けた東京国際大のケニア人留学生イエゴン・ヴィンセント(1年)が激走を見せた。

淡々と力強い走りを続けると、11キロ過ぎに悠々と先頭を行く青学大の鈴木塁人(4年=千葉・流通経大柏)に近づく。驚いた様子で笑いながら身ぶりで首位を譲られた。ペースを落とすことなく平塚中継所にトップで飛び込み、1時間切りとなる驚異の59分25秒の区間新記録を樹立した。

10月の予選会後に「日本に来て1番慣れないことは」と聞くと、「アスファルト上での走り」と根本的な問題を口にした。ケニアでは土の上で練習するのが当たり前だった。硬い路面に苦しめられたが来日わずか9カ月で克服。日本の整備された国道を跳びはねるように快走した。

話せる日本語は「ありがとう」などのあいさつ数語。チームメートとの通訳は同じケニア人1年生で、仙台育英から日本に留学していたムセンビが務める。好きな日本料理を尋ねるとヴィンセントは「それは言えない。だって、その料理名を表す日本語が分からないから」と、笑っていた。チームは3年連続4度目の出場で初シードを目標にしてきた。大志田監督は5強の一角を崩す1番手と言われることに、「うちはその域に達していない」と謙虚な姿勢を示しながら、同時に「どこかで『東京国際がトップに立ちました』というのは言われてみたいなあ」とも。そのささやかな願いが現実のものとなった。