陸上男子100メートルの多田修平(23=住友電工)が復活の予感を漂わせた。6秒58で、2位の岩崎浩太郎(ユティック)に0秒12差の圧勝だった。

決勝は8人の中で、最速となる0秒111秒で号砲に反応した。持ち味のスタートの切れ味は群を抜いていた。序盤から体1つ前に出て、そのまま差を広げていった。速報の電光掲示板には一瞬だけ「6秒35」と世界歴代2位のタイムが表示された。会場はどよめく。そのタイムは修正され、多田は苦笑いも、レース内容には納得できた。

予選も6秒63の1着で通過していた。「今の状態のマックスを出せた。優勝し、(6秒)58を出せてよかった。いい流れはできたのかな。やっと楽しいレースをできた。自信につながる」。そう明るい表情で今季の初戦を振り返った。17年には追い風参考ながら、9秒94を出すなどブレークも、過去2シーズンは苦しんだ。体のバランスは崩れ、足が後ろに流れる癖も出ていた。しかし、それも改善できる手応えを十分に感じている。まずは東京オリンピック(五輪)の参加標準記録10秒05を突破することが目標。その上で「日本選手権までに9秒台を出して、アピールができたら」と語った。

東京五輪の男子100メートル代表選考の大一番となる今年の日本選手権は大阪・ヤンマースタジアム長居での開催だ。2位に入った17年日本選手権の時と同じ会場でイメージもいい。地元・大阪の大声援も力になる。「日本選手権では3番以内と言わず、9秒台の優勝を目指したい」。失った時期もあった自信が、言葉にみなぎっていた。