積水化学の新谷仁美(32)が異次元の快走をみせた。エースが集う3区(10・7キロ)で32分43秒。従来の区間記録を1分15秒も更新した。退屈にも見えるほどの独走の展開を築き、チームの2連覇、本大会(11月22日・宮城)への12年連続22回目となる出場に貢献した。

卜部蘭からトップでタスキを受けた時、2番手ヤマダとの差は10秒だった。その先頭争いに、あっという間に終止符を打った。「後ろは気にしなかった」。最初からぶっ飛ばし、どんどん前に出て、リードを広げる。最後まで勢いは衰えない。4区宇田川侑希にタスキを渡した時、後続との差は1分58秒になっていた。

新谷は「一言できつかった」と振り返った。今大会は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、沿道での観戦自粛が促されていた。会社の応援のぼりも立っていない。「直接の応援がないのはきつかったが、(テレビの)画面越しから応援があると思ったら頑張れた」と話した。

約8年ぶりの実業団駅伝だった。新谷は13年世界選手権1万メートルで5位。しかし、故障にも苦しみ、14年1月に電撃引退した。

一時は体重が13キロも増えたというOL生活を経て、18月6月に復帰した。今は丸4年のブランクを感じさせない快走を続ける。今年1月にハーフマラソンで1時間6分38秒の日本記録を樹立しただけでなく、9月には5000メートルで日本歴代2位の14分55秒83秒を出した。

すでに東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は5000メートルと1万メートルの2種目で突破している。