晴れ舞台に立つことはできないチームリーダーが今大会に2人いる。

55年ぶりに出場する立大のミラー千本真章(4年)と、箱根駅伝2連覇を目指す青学大の宮坂大器(4年)の両主将だ。チームメートからの人望が厚い両者はいずれも、箱根路を走る夢を仲間たちに託し、精神的支柱としてチームを支えていく。

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報道陣で埋め尽くされた立大の取材会場。身長189センチのミラー主将は、マイクを握ると優しい声で言った。「普段通りの走りができるようにサポートしたい」。16人のエントリーメンバーに4年生はゼロ。いつもふわりと笑う主将は、念願の舞台でも裏方に徹する。

苦闘の日々だった。1500メートルのタイムが好調だった3年時の21年7月。本格的な練習再開に半年以上を要するヘルニアを発症した。「思い出したくない」ほど、光が見えなかった毎日。このままではダメだ。同年夏に新主将に立候補した。自信はなかったが、同期は「俺たちが支える」と約束してくれた。思わず涙があふれた。恩を胸に奔走し、バラバラだった消灯時間を午後10時半に統一。反発もあった。辞めたいと思うこともあった。でもその度に、あの涙を思い返した。

55年ぶりの箱根路では、荷物運搬係として全区間を回る。「いろいろな感情が生まれるのは、つないでくれた後輩たちのおかげ」。思いが揺れる中、主将としての最後の献身を示す。

連覇を目指す青学大の宮坂主将も、エントリーメンバーから漏れた。「残念ながら自分の力が及ばなかった。当日はサポートに回り、少しでもチームが優勝する力になりたい」。

同期には近藤、岸本ら強力メンバーがそろう。大学3年まで3大駅伝に出走した経験はなかったが、主将の大役を任された。今年11月の全日本で待望の大学駅伝デビュー。アンカーでたすきを受け取ったものの、区間10位と振るわなかった。箱根のメンバーから外れることを告げられたときは「直近の成績も悪かった。届かなかったな、残念だったな、というのが素直な感想」。現実を受け入れ、真っすぐに前を向いた。

タイムは伸び悩んだが、4年間で人間的にも大きく成長した。「走れないからといって、自分がしょげたりすることは誰も求めていない。チーム全体を鼓舞していきたい」。最後まで仲間を引っ張っていく。

副将の横田は誓う。「監督とキャプテンを胴上げできるように頑張る」。それは部員全員に共通する思いだ。【藤塚大輔、奥岡幹浩】

◆ミラー千本真章(ちもと・まっくす)2000年(平12)8月3日、東京都生まれ。埼玉県さいたま市育ち。埼玉・立教新座高3年時には800メートルで高校総体出場。1500メートルの自己ベストは大学3年4月の3分44秒30。米国人の父を持つ。身長189センチ、体重67キロ。

◆宮坂大器(みやさか・たいき)2000年(平12)10月4日、埼玉県生まれ。川越市立砂中3年時には全国中学選手権男子1500メートルで優勝。埼玉栄高では主将として全国高校駅伝に出場した。1万メートル自己ベストは28分34秒23。身長171センチ、体重53キロ。