【大邱(韓国)26日=佐藤隆志】陸上の世界選手権は今日27日、女子マラソン(午前9時号砲)で開幕する。日本のエース尾崎好美(30=第一生命)は本番前日、勝負どころとなる終盤のコースをチェック。金メダルへのイメージトレーニングで、最終調整を終えた。前回大会は40キロすぎからのデッドヒートに屈して銀メダル。その教訓を生かし、今回は38キロすぎからのロングスパートで勝負をかける。日本人最上位でメダルを獲得すれば、来年の五輪出場が内定。安定感を増した尾崎が金メダルとロンドン切符の二兎(にと)を追う。

 尾崎に迷いはない。レース前日の朝9時、山下監督、野尻と大邱の街へ飛び出した。スタート付近から走り始め、終盤のコースを入念にチェック。時間にして1時間ほどだった。2カ月以上に及ぶ長期合宿で走り込みは完了。だから最後は体に負荷はかけず、頭の整理で準備を終えた。「走ると意外と蒸しますが、暑すぎず、寒すぎずですね。走りやすい」。その表情は晴れ晴れとしたものだった。

 前回ベルリン大会は終盤に力尽き、銀メダルだった。うれしい半面、やはり悔しさが残った。その教訓を生かし、取り組んできたのがロングスパートだ。「どんな練習でも最後は全力でスパートした。50メートルダッシュを入れたり、ミニハードルを使って少しストライドを伸ばす練習をしたり」。世界のトップに立つため、課題のスピードと終盤の切れに磨きをかけた。

 大邱コースは、市内中心部の中央路駅から東に約1キロほどに位置するクッチェボサン運動記念公園を発着点に、1周15キロの周回路だ。距離調整のため3周目は35キロ地点で右折し、ショートカットする。高低差は最大40メートルという平たん。馬力はないが、展開に左右されない尾崎には理想的なコースだ。体調の不安もない。だから30キロすぎまでトップ集団に付け、終盤どこで飛び出すか。それが尾崎陣営にとって、最大の焦点になる。

 尾崎

 イメージとしては、最低でも残り5キロ。早ければ30キロすぎで。走りだしてから考えますが、いろんな想定で練習してきた。距離も踏んでいるので、対応はできると思います。

 その言葉からすると、大邱銀行駅の交差点を左折し、スソン橋を越えた38キロすぎが勝負ポイントになる。レースを引っ張るキプラガトらアフリカ勢を後ろに置いてのロングスパート。そして40キロすぎの半月堂交差点を約200メートル直進し、現代デパート前で折り返す。「スパートすると後ろが気になるので、その折り返し地点で確認したい」。後続の位置を頭に入れ、あとはゴールまで駆け抜けるだけ-。尾崎はそんな勝利のシミュレーションを思い描く。

 「前回の銀メダリストとして、ここは金メダル。五輪選考もかかるので、ここで決めたい」。やり残したことはない。大邱からロンドンへ、尾崎は自信を持ってスタートラインに立つ。