こんにちは、スポーツアンカーの山田幸代です。今回のインタビューは、サッカーJ3「いわてグルージャ盛岡」で活躍するFWブレンネル・アウベス・サビーノ(BRENNER ALVES SABINO、21)選手。

グルージャは、2019年シーズンは最下位の18位に沈んだ。秋田豊監督が就任した今季は11月17日現在、13位につけるが、J2昇格を目標に掲げたシーズンで苦戦を強いられる。そんな中、インテルナシオナル(ブラジル)から期限付き移籍で加入したブレンネルに期待が集まっている。

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ブレンネルは、182センチ、75キロと恵まれた体格の力強いFW。第一印象は「とても明るくやんちゃな少年」といった感じだったが、プレーの話を始めると、その真剣なまなざしからサッカーへの思いや情熱が深く伝わってきた。

インタビューは10月25日。当日の岐阜FCとの試合の話から始まった。

ブラジルのユース時代から足元の練習など、テクニック面での努力を続けてきたというブレンネルは、試合の中でも大きな体を生かした力強いプレーの中での器用さが目立った。MF中村正臣選手とルーカス・モレラト・ダ・クルス選手との連係プレーを中心に練習に励んでいるといい、序盤から得点チャンスを何度もつくった。しかし最後の決定力に欠け、前半は0-0。後半、体力の低下が目立ったところで、秋田監督から交代を命じられた。試合は岐阜FCに猛攻を浴び、0-4で敗れた。

ブレンネルは「自らの決定力不足のせいで負けを呼び込んでしまった」と悔やんだ。チームの中心として得点を取り続けることが自分の役割と考えている。


では、その仕事をするために、ブレンネルには何が必要なのだろうか。彼は言った。「日本の練習は、フィジカル練習が多く、ボールを使った練習の量が少ない。でも、それは今の僕にとって大切なことなのだと、最近自覚している」。

秋田監督はフィジカル練習だけ1日中行う日があるほど、体力面や精神面の両方の成長を選手たちに期待している。ブレンネルは、フィジカルがメインの練習をブラジルで体験したことがなかった。でも今は、それが自分に足りていないものなのだと気づいたという。試合に勝つための体力、そして忍耐力が自分にはまだ欠けていると。


サッカー大国のブラジルと日本のサッカー。大きく何が違うのか? 練習の種類や質が成長の度合いを変えるものなのか、それとも練習に対する姿勢なのか。知りたくなった私は、「その違いとはいったいどういったところなの?」とブレンネルに聞いてみた。

「ブラジルには有望な選手が数えきれないほどいる。競争する機会が多く、それがまた強さを増すものになっていくのだと思う。日本はまだ、ブラジルほどのサッカー大国にはなっていない。そしてその中でも一番大きな違いが選手の勇気だ」と言った。

「勇気? それはどういう意味?」と聞くと、こう答えた。

「日本のサッカー選手は、監督やコーチの言っていることを忠実にプレーしようとする。それは、悪いことではないが、決められたことしかできなくなっている傾向にある。たとえば、チームとしてパスを左から右に出していく。というプランを立てていたら、たとえパスを出す相手にしっかりDFがついていて、パスを阻まれていたとしても、選手はその決められた形を優先して、DFがついている味方にパスをしてしまう。たとえ、目の前に空いているフリーの選手がいるとしてもだ。状況が変わってしまった時などに、自らの判断を信じてプレーを変えられる選手が少ない。右に出すと決まっていたら右にしかパスを出そうとしない。その時に、勇気をもってプレーを変える選択をすること自体を怖がっているように思う」

確かに、私もそれは感じる場面がある。日本人は言われたことを忠実に表現することはとてもたけていると思うが、自らのプレーが今の状況では正しいと信じ切ることに自信がないシーンをたくさん経験してきたし、見てきた。これは、日本の文化なのか。

まだ、1年も日本に滞在していないブレンネルが感じるということは、そういうシーンがとても多いのだと思う。

ブレンネルは、そういう日本人の文化の中でも自分が少しでも勇気あるプレーを見せて、日本の選手たちに何かを伝えることができたら、と語った。

ブラジルから来た21歳の若い選手が日本らしい練習を通して自らの成長を追い求め、忠実さを学ぶ。そして、ブラジルで学んだ勇気あるプレーでチームを引っ張っていく。グルージャが秋田監督の采配のもと、来シーズンにはJ2昇格を勝ち取ることを期待している。

(プロラクロス選手・スポーツアンカー 山田幸代)

◆今季の昇格 J1、J2、J3すべてのカテゴリーで「昇格あり」「降格なし」の特例ルールが適用される。J3は上位2クラブがJ2に昇格するが、参加条件を満たさない場合は変動する。