8月5日から7日にかけて、日環アリーナ栃木で飛び込みの日本選手権が行われた。

初日には、世界選手権3mシンクロで銀メダルを獲得した三上紗也可(21=日体大)と金戸凜(19=セントラルスポーツ)が登場。予想通り、女子3m個人ではワンツーフィニッシュを果たした。同日に行われた女子3mシンクロでも息ぴったりの演技で優勝。世界選手権でも素晴らしい演技を見せてくれた2人だが、今大会の方が肩の力が抜け、のびのびとした演技に見えた。世界でのメダル獲得が本人たちに自信をつけたのはもちろん、国内の慣れた環境というところでも演技に余裕を持たせたのではないだろうか。

女子3メートル板飛び込みで優勝した三上紗也可(共同)
女子3メートル板飛び込みで優勝した三上紗也可(共同)

個人種目でも優勝した三上は、予選1本目から安定した演技を連発。2本目に飛んだ107B(前宙返り3回転半エビ型)では、各審判が10点満点中8.5点~9点を出す、ほぼ完璧な演技を見せ会場を沸かせた。勢いそのままに決勝まで首位をゆずらず、オリンピアンとしての貫禄をみせつけた。

私も現役時代に何度も挑戦した「107B」。しかし、なかなか完成させることが出来なかった。どの会場でも同じ性質の板ならいいが、プールによって板の性質が全く違う。そのため、板と自分のタイミングが合わなかった時は、高さが足りなかったり、回転がかからなかったりと思うように飛べなくなってしまうのだ。試合会場でそうなってしまった時は、本当に最悪だった。その度に板飛び込みに対する苦手意識が高まり、自信を無くしていた。

女子シンクロ板飛び込みで優勝した金戸凜(左)・三上紗也可組(共同)
女子シンクロ板飛び込みで優勝した金戸凜(左)・三上紗也可組(共同)

女子の場合、難易度3.0以上が高難度の技になる。107Bは難易度3.1。跳躍力、瞬発力、そして回転力が無ければ飛べない高難度の技である。そのため、ひと昔前まではパワーのある男子選手が飛ぶ技だった。しかし、三上はどんな板でも簡単そうに飛んでみせる。そこが彼女のすごさの1つだ。

現在では、世界に出ればかなりの女子選手が選択する技になっているが、その背景には、板の性質の進化や、コーチング技術が上がったことがあげられる。しかし、それでも日本ではなかなかこの技を「自分のもの」にし、世界でも高得点を出せる選手が出てこなかった。そこに、やっと三上や金戸といった高難度の技を安定して決められる選手が出てきてくれたのだ。

飛び込みは1本だけ成功させても勝てる競技ではない。女子は5本、男子は6本全て成功させて初めて結果につながる。どの演技にも異なる技術が必要なため、得意不得意は少なからずあるが、着実に力をつけて強くなっていることは間違いない。

まだまだ伸びしろがある日本の女子選手から目が離せない。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)