陸上の世界選手権で、個人的に注目度が急上昇した“逸材”がいます。実力はもちろん、特筆すべきはバラエティー番組でも活躍できそうな強烈なキャラ。残念ながら紙面で取り上げることができなかったので、この場を使って紹介させてください。

 その選手は陸上の世界選手権女子1万メートル代表の松田瑞生(22=ダイハツ)。19位だったレース後、満面の笑みで取材エリアに現れると超ハイテンションでまくしたてた。

「ケニア勢に付けるところまでいこうと思って~。アヤナ選手の真後ろに付いていたので、ドキドキワクワクで楽しかった。この舞台やし、テレビにいっぱい映りたいじゃないですか? だから映れるところに行こうと最初に勝負かけました。超満員は経験ないし、ボルト選手が最後で盛り上がってヒートアップしてる。この舞台で走れて、運があるなと思いました」

 初の世界選手権での目標がテレビに多く映ること!? 笑いの本場・大阪で生まれ育った日本選手権女王のマシンガントークが止まらない。

 実は世界記録でリオ五輪を制したアルマズ・アヤナ(エチオピア)も含め海外選手の顔はそれぞれ認識できていなかったという。「ゼッケン見て、この人がアヤナさんか~と思って走ってました」と興奮気味。レース中はアフリカ勢から接触を受けながら、ポジションを争った。「めっちゃムカつくわ~。痛ったいな~と思って、やり返しました。ハッハッハッハ」と気の強い一面ものぞかせながら回想した。あまりに楽しそうに語る姿に、何を話しているか分からないはずの海外メディアも思わず、振り向いていた。

 ちなみにセールスポイントは体が反る癖を修正するため、大阪薫英女学院高時代から鍛えてきた腹筋。毎日、10種類の腹筋を1時間以上かけて、最低計500回は行う。毎朝、鏡の前に立って腹筋チェックを欠かさないという。たしかに腹筋は男子選手並みにバキバキ。「理想の腹筋」があるとのことで、日本選手権時がそうだったという。ただ世界選手権時は、直前の合宿で調子を崩してしまった影響で、腹筋は「最低限は作ってきたんですけど、ピークではなかったですね」。この日、一番の痛恨の表情を浮かべた。

 ノリのいいコメントも、ただ目立ちたいだけではない。取材エリアでは最後に言った。

 「みんなを笑顔にしたいんです。悔しくても、泣いても、笑って受け答えしたいんです」

 私事ですが、この日の大会第2日は、男子100メートル準決勝、決勝などがあり、翌日の男女マラソンも含め原稿量がピークだった日。早くも色濃かった疲労を松田のとにかく明るい笑顔が吹き飛ばしてくれた(一時的に…)。20年東京五輪はマラソンでの出場が目標という元気娘に、みなさんも注目してください。【上田悠太】


 ◆上田悠太(うえだ・ゆうた)1989年(平元)7月17日、千葉・市川市生まれ。明大卒業後、14年に入社。芸能班に配属され、TBSを中心にテレビ担当。15年秋にスポーツ部へ異動となり、16年11月から陸上を取材。