馬場馬術のリオデジャネイロ五輪日本代表選考会は2日、ドイツのハーゲンで最終日が行われ、黒木茜(37=スクーデリアエクイット)が4位となり、初の五輪出場を決めた。同選考会出場を逃した夫の相馬小次郎(45=同)は平安時代の豪族平将門の末裔(まつえい)。「(馬術に)血が導いている」と話す夫の支えを受け、リオに乗り込む。人馬上位4組が代表切符をつかんだ。

 夫婦の夢の半分を一発勝負でかなえた。夫の相馬は愛馬の故障で選考会参加条件を満たせず。黒木はその無念を胸に、トゥッツ号との息のあった動きで五輪切符をたぐり寄せた。

 出会いは01年。夫が兵庫県内に開設した乗馬クラブだった。放射線技師の黒木は偶然生徒第1号となり、夫の下で競技の腕を磨いた。「昔から私の技術を見ているから指摘が端的なんです」。08年に結婚。12年ロンドン五輪後に拠点を海外に移し「一緒に東京五輪に出たいね」と誓い合った。

 夫の相馬は馬に携わり35年以上になる。曽祖父と曽祖母が創業1901年(明34)の老舗食品メーカー「新宿中村屋」の創業者。祖父がある時、家系図を発見すると遠い過去に「平将門」の名があった。夫は「馬に魅力があるのはもちろんですが(平将門の)血が導いているのかと思うことはありました」と笑う。

 黒木は馬術から離れれば、70人を率いる老人ホームの社長。欧州での練習時も「電話に出られるようにマナーモードは禁止です」と夜間に働く。二刀流の実現は「スタッフ、利用者さん…。もちろん夫の応援もあってです」。夢舞台が恩返しの場になる。【松本航】

 ◆黒木茜(くろき・あかね)1978年(昭53)8月13日、兵庫・加古川市生まれ。東播磨高から神戸総合医療専門学校に進み、放射線技師として就職。20歳の時に乗馬クラブで初騎乗し、25歳から競技開始。12年から拠点をドイツに移し、同年11月からオランダへ。167センチ、50キロ。

 ◆黒木以外の馬場馬術代表 北井裕子(43=アシェンダ乗馬学校)高橋正直(34=伊香保バーデンファーム)原田喜市(43=蒜山ホースパーク)