世界5位のロジャー・フェデラー(35=スイス)が、5年ぶり単独最多となる8度目の優勝を果たした。同6位のマリン・チリッチ(クロアチア)に6-3、6-1、6-4で勝ち、自身が持つ4大大会男子シングルス最多優勝回数を19に更新した。また、35歳での優勝は68年オープン化以降、同シングルスでは最年長となった。

 いつまでフェデラーの天下は続くのだろう。35歳はオープン化以降の最年長優勝だ。今年出場した4大大会は全豪とウィンブルドンで負けなし。今年、ツアーでもまだ2敗しかしていない。昨年のウィンブルドン以降、左ひざのケガで完全休養。エネルギーを充電して挑んだ成果が表れた。7試合を戦い、1回戦での相手の途中棄権を含め、失セット0の「完全優勝」だった。

 第2セットで勝負の行方は決着がついた。3-0でフェデラーのリードで、コートチェンジの際、チリッチが突然、ベンチで泣きだした。タオルをかぶり、目頭をぬぐった。すぐにトレーナーとドクターが呼ばれた。

 しかし、チリッチは試合続行を決断。フェデラーはその間、全く相手を見ず、時間とともにコートに戻った。冷血に見えるが、どんなことにも惑わされない。聖地での決勝がどれだけ厳しいものかを知っていたからだ。

 レンショー、サンプラスと並んでいた優勝回数も更新した。優勝セレモニーの前、観客席にいる家族を見ると、感極まり涙をこぼした。聖地に最も愛された男が、名実ともに歴史に残る芝の王者となった。【吉松忠弘】

 ◆フェデラーのコメント 本当にファンタスティックな気持ちだ。それも1度もセットを落とさず、マジックのようで信じられない。また戻ってきて優勝したい。