14年ソチ五輪男子金メダルの羽生結弦(22=ANA)が、今季初戦で自身が持つショートプログラム(SP)世界歴代最高得点を1・77点更新する112・72点をマークし、首位発進した。右膝の痛みから4回転ループを回避するなど、難度を落とした構成で臨みながら、完璧な演技で高得点を引き出した。18年平昌五輪での連覇へ、最高のスタートを切った。

 SPを終え、会場から去る羽生を待っていると、私を見るなり「ディック・バトンさんの、ありがとうございました」と声をかけられた。ディック・バトン氏とは48、52年五輪を連覇した現在88歳になる米国のレジェンドスケーター。同氏に、自分以来66年ぶりに五輪連覇を目指す羽生へエールを送ってもらおうと、6月にニューヨークの自宅を訪ね、インタビューした。その際に、直筆メッセージを預かり、関係者を通じて本人に届けていた。

 透明な額に入れて渡したが、そのまま部屋に飾ってあるという。バトン氏のメッセージは「五輪を、リラックスして、楽しんで!」。シンプルな言葉だが、その裏には五輪の重圧を乗り越え、完璧な演技をすることこそが勝利につながる、という意がある。この日の演技のように、楽しみ、自分らしく滑れば五輪で最高の結果が待っているはずだ。【高場泉穂】